「驚いた、まさか…お母さんが早く帰宅して鉢合わせしちゃうなんて」
「…それは俺も驚いた。帰ってくるなら事前に伝えてほしかった」
「でも自分の家だもんね、蒼君だって帰ってきてほしいでしょ?」
うん、とは言わなかった。
家を出て逃げるように早歩きで住宅街を抜ける。
母親には後で何と言っておこうか、詩のことを彼女だと思われると後々面倒だとか脳内でグルグルと考える。詩は最初こそ驚いていたがすぐに平常のテンションで母親と会話をしていたのを思い出すとやっぱり彼女は凄い。
「人にぶつからないように気を付けて」
「分かってるよ。ふふ、前夜祭ってワクワクするね」
改めて田舎で良かったと思った。
もしも同じ状況で場所が東京だったらおそらく一週間も経たずに詩は誰に触れてしまい消えてしまうだろう。
学生以外は車社会の地方だからこそ、詩は何とか最後まで消えずに済んだと思うとこの環境にも感謝しかない。
少し心配ではあったが、学校に来てもトラブルもなく事前に詩には触れないよう周囲に伝えてあったとはいえ彼女が危険に晒されることなく無事に終えたことを思うと詩を信じてもいいのかなと思った。
バスを使って学校近くのバス停に下りて詩と別れた。
詩は五稜郭公園を散歩するそうだ。
詩のお陰で学校へ行く足取りは以前よりも軽い。クラスメイトと仲良く喋ることはないが、それでも以前とは打って変わって挨拶をしてくれるクラスメイトが増えた。
クラスのドアに手を掛けて開け中に入った。数時間に行われる前夜祭がよほど皆楽しみなのだろう、明らかに普段以上に浮ついているのが伝わってくる。
でも、それが自然なのだと思う。一年に一度の大イベントが迫っているのだから。
既に衣装に着替えている生徒が多い中、俺だけが私服だった。
それをみた橋本さんがすぐに俺の元に来て
「早く着替えてきて!」と勢いよく言われ反射的に頷く。
「分かった」
短く返事をして俺は渡された衣装に着替える。
「笹森君の衣装は詩ちゃんが作ったんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ。知らなかったの?詩ちゃんにも参加してもらいたかったけど…近くで見てくれていたらいいのに。最後に花火も打ちあがるし」
「多分近くで見てると思うよ」
「…それは俺も驚いた。帰ってくるなら事前に伝えてほしかった」
「でも自分の家だもんね、蒼君だって帰ってきてほしいでしょ?」
うん、とは言わなかった。
家を出て逃げるように早歩きで住宅街を抜ける。
母親には後で何と言っておこうか、詩のことを彼女だと思われると後々面倒だとか脳内でグルグルと考える。詩は最初こそ驚いていたがすぐに平常のテンションで母親と会話をしていたのを思い出すとやっぱり彼女は凄い。
「人にぶつからないように気を付けて」
「分かってるよ。ふふ、前夜祭ってワクワクするね」
改めて田舎で良かったと思った。
もしも同じ状況で場所が東京だったらおそらく一週間も経たずに詩は誰に触れてしまい消えてしまうだろう。
学生以外は車社会の地方だからこそ、詩は何とか最後まで消えずに済んだと思うとこの環境にも感謝しかない。
少し心配ではあったが、学校に来てもトラブルもなく事前に詩には触れないよう周囲に伝えてあったとはいえ彼女が危険に晒されることなく無事に終えたことを思うと詩を信じてもいいのかなと思った。
バスを使って学校近くのバス停に下りて詩と別れた。
詩は五稜郭公園を散歩するそうだ。
詩のお陰で学校へ行く足取りは以前よりも軽い。クラスメイトと仲良く喋ることはないが、それでも以前とは打って変わって挨拶をしてくれるクラスメイトが増えた。
クラスのドアに手を掛けて開け中に入った。数時間に行われる前夜祭がよほど皆楽しみなのだろう、明らかに普段以上に浮ついているのが伝わってくる。
でも、それが自然なのだと思う。一年に一度の大イベントが迫っているのだから。
既に衣装に着替えている生徒が多い中、俺だけが私服だった。
それをみた橋本さんがすぐに俺の元に来て
「早く着替えてきて!」と勢いよく言われ反射的に頷く。
「分かった」
短く返事をして俺は渡された衣装に着替える。
「笹森君の衣装は詩ちゃんが作ったんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ。知らなかったの?詩ちゃんにも参加してもらいたかったけど…近くで見てくれていたらいいのに。最後に花火も打ちあがるし」
「多分近くで見てると思うよ」