自分の中で詩の願いを叶えてやりたいという思いとあまりにもリスクが高いという反する思いで揺れていた。
「裁縫、得意な子いる」
「…え?いるの」
それなのに俺は意外にもすっと前者の選択をしていた。詩があんなにも学校へ行くと啖呵を切っていたことにもあるのかもしれない。
「いる。俺の…知り合いに。今月までは北海道にいる。本州の子で夏休み期間だけ北海道にいるらしい」
「そうなんだ。それならできれば手伝ってほしいなぁ。担任の先生に確認してみる。どうせ今週は授業ないしこっちも人手不足だからそれ言えば許してくれると思う。じゃあ連絡先交換してもいい?詳細は随時連絡する」
分かった、と言って自然な流れで連絡先を交換した。学校ではほぼ誰とも喋ることなく出席日数のために登校しているからこうやって同じクラスメイトと喋ること自体久しぶりだというのに加えて連絡先交換など俺にはありえないことだった。
俺は橋本さんと連絡先交換をした後、買い出しの為学校を出た。
♢♢♢
「本当に?!私学校行っていいの?!」
「うん、でも条件がある。走らないことと俺も事前にみんなには伝えるけど触れないでほしいことを伝えること」
「もちろんだよ!私裁縫得意なんだ~!みんなの役に立てるなんて本当に楽しみ」
「静かに。下に母親がいるんだから」
ベッドの縁に腰かけて(そこがだいたいの詩の定位置だ)はっとして口元に手を添えた。
もちろん既に声を出しているから意味はない。
「もう少しだね」
詩がいつもの柔和な笑みを消していった。その言葉の意味を深く考えなくとも分かってしまうのは俺の脳内で常に詩との残りの時間がもうないことを常に考えているからだろう。
「そうだな」
唾を呑み込んで、天井を見上げた。
「ねぇ、聞いてもいい?どうして蒼君は学校に行きたくないの?」
「ちゃんといってるじゃん」
「今は登校しているけどそれでも嫌そうだし。何かあったのかなって」
「じゃあその代わり詩の最後の願い教えてよ。ほら、やり残したことリスト…あれ、空白あったじゃん」
詩が絶対に教えてくれない最後の項目が聞きたかった。いつ訊いてもはぐらかすから余計に気になるし、もしもかなえてあげられそうであればあと少しの時間を使って手伝いたい。
しかし詩はポリポリとこめかみを掻いて「うん…うーん、」と唸り始める。
「裁縫、得意な子いる」
「…え?いるの」
それなのに俺は意外にもすっと前者の選択をしていた。詩があんなにも学校へ行くと啖呵を切っていたことにもあるのかもしれない。
「いる。俺の…知り合いに。今月までは北海道にいる。本州の子で夏休み期間だけ北海道にいるらしい」
「そうなんだ。それならできれば手伝ってほしいなぁ。担任の先生に確認してみる。どうせ今週は授業ないしこっちも人手不足だからそれ言えば許してくれると思う。じゃあ連絡先交換してもいい?詳細は随時連絡する」
分かった、と言って自然な流れで連絡先を交換した。学校ではほぼ誰とも喋ることなく出席日数のために登校しているからこうやって同じクラスメイトと喋ること自体久しぶりだというのに加えて連絡先交換など俺にはありえないことだった。
俺は橋本さんと連絡先交換をした後、買い出しの為学校を出た。
♢♢♢
「本当に?!私学校行っていいの?!」
「うん、でも条件がある。走らないことと俺も事前にみんなには伝えるけど触れないでほしいことを伝えること」
「もちろんだよ!私裁縫得意なんだ~!みんなの役に立てるなんて本当に楽しみ」
「静かに。下に母親がいるんだから」
ベッドの縁に腰かけて(そこがだいたいの詩の定位置だ)はっとして口元に手を添えた。
もちろん既に声を出しているから意味はない。
「もう少しだね」
詩がいつもの柔和な笑みを消していった。その言葉の意味を深く考えなくとも分かってしまうのは俺の脳内で常に詩との残りの時間がもうないことを常に考えているからだろう。
「そうだな」
唾を呑み込んで、天井を見上げた。
「ねぇ、聞いてもいい?どうして蒼君は学校に行きたくないの?」
「ちゃんといってるじゃん」
「今は登校しているけどそれでも嫌そうだし。何かあったのかなって」
「じゃあその代わり詩の最後の願い教えてよ。ほら、やり残したことリスト…あれ、空白あったじゃん」
詩が絶対に教えてくれない最後の項目が聞きたかった。いつ訊いてもはぐらかすから余計に気になるし、もしもかなえてあげられそうであればあと少しの時間を使って手伝いたい。
しかし詩はポリポリとこめかみを掻いて「うん…うーん、」と唸り始める。