まぁどうせ暇だからいいけど、と心の中で呟きしばらく歩いた。少しだけ太陽が雲に隠れてくれたおかげで日光が直接降り注ぐことはなかったが、それでも十分に太陽の熱を吸収したアスファルトは熱を放ち、サンダルだからかそれが余計に伝わってくる。
目の前を歩く彼女も俺と同様にサンダルだったが汗ひとつかいていないように思えた。
「あれが私の家」
「…家?」
七月の暑さの続く中、三十分は歩かされてようやく彼女が足を止めた。
閑静な住宅街が広がるそこを見渡す。
彼女は数メートル先の家を指さしそう言った。
「あれが君の家?」
「そう、私鈴村っていうの」
「…へぇ」
目はあまり良くはないから目を細めて表札を確かめる。確かに鈴村と書かれてあるように見えた。
「ちょうど今通夜の準備をしていると思うの。だから少し見てきて。そうしたらわかるから」
「…いや、なんで俺が?」
「ここまでついてきてくれたじゃない。私がもう死んでいるってことを証明したいの」
「……」
彼女に指示され、渋々一人で鈴村家に近づく。夕方になろうとしているが最近は日が長いことからまだ日が出ている。
鈴村家と書かれた表札を再度確認して、中を伺おうとするがタイルの玄関アプローチが長く居間の様子も見ることが出来ない。一般的な一軒家よりも高級感の溢れる家からは人の声はしない。
(彼女が言っていることが本当なら…今通夜の準備をしているということか?)
とはいえ、全くの他人である俺がこの格好で訪ねるのは不自然だ。
腕を組みどうしようかと思っていると、突然ドアが開いた。
そこには今会ったばかりの彼女に良く似た上品な女性が立っていた。
下の位置でポニーテールにした女性は少し…いや、かなりやつれているように見える。
完全に目が合った状態で数秒固まった。
俺の母親と同年代ほどのその人が口を開く。
「えっと…どちら様かしら」
「あ、あの…その、…鈴村さんの…」
何も用件がないのに家を覗き込もうとしていたと知られたら完全に警察案件だ。
咄嗟に彼女の友達だと嘘をつこうとしたが下の名前を知らないことに今更気が付いた。
目の前を歩く彼女も俺と同様にサンダルだったが汗ひとつかいていないように思えた。
「あれが私の家」
「…家?」
七月の暑さの続く中、三十分は歩かされてようやく彼女が足を止めた。
閑静な住宅街が広がるそこを見渡す。
彼女は数メートル先の家を指さしそう言った。
「あれが君の家?」
「そう、私鈴村っていうの」
「…へぇ」
目はあまり良くはないから目を細めて表札を確かめる。確かに鈴村と書かれてあるように見えた。
「ちょうど今通夜の準備をしていると思うの。だから少し見てきて。そうしたらわかるから」
「…いや、なんで俺が?」
「ここまでついてきてくれたじゃない。私がもう死んでいるってことを証明したいの」
「……」
彼女に指示され、渋々一人で鈴村家に近づく。夕方になろうとしているが最近は日が長いことからまだ日が出ている。
鈴村家と書かれた表札を再度確認して、中を伺おうとするがタイルの玄関アプローチが長く居間の様子も見ることが出来ない。一般的な一軒家よりも高級感の溢れる家からは人の声はしない。
(彼女が言っていることが本当なら…今通夜の準備をしているということか?)
とはいえ、全くの他人である俺がこの格好で訪ねるのは不自然だ。
腕を組みどうしようかと思っていると、突然ドアが開いた。
そこには今会ったばかりの彼女に良く似た上品な女性が立っていた。
下の位置でポニーテールにした女性は少し…いや、かなりやつれているように見える。
完全に目が合った状態で数秒固まった。
俺の母親と同年代ほどのその人が口を開く。
「えっと…どちら様かしら」
「あ、あの…その、…鈴村さんの…」
何も用件がないのに家を覗き込もうとしていたと知られたら完全に警察案件だ。
咄嗟に彼女の友達だと嘘をつこうとしたが下の名前を知らないことに今更気が付いた。