札幌は函館よりも人が多く駅も広く都会だなと思った。
それなりに自然もあって住むのにちょうどいいと思った。それを詩にいうと
「でも相当積雪量多いみたいだよ」
と、急に現実的な発言をしたので思わず笑ってしまう。

「北海道に住んでいるのにその発言する?」
「だって函館は雪少ないでしょう?まぁ、東京とかの人から見たら多いんだろうけど」
「積雪量は多いらしいね。冬に来たことはないけど」
 札幌の冬は相当な雪が降る。降る年は詩の身長ほど積もると訊く。
永遠に雪かきをしなければならないのは確かにげんなりするだろうなと思った。
「やっぱり函館がいいよ。いい所だよね」
「そうかもね」
 他愛のない会話をしていると、札幌の時計台前に到着した。
ちょうど太陽に雲がかかってくれて体感的に気温が低くなったように感じる。
「これが時計台?!」
「そうそう、ちらほら観光客もいるね」
 赤い屋根と白い外壁が印象的で観光客が既に数人写真を撮っている。
詩は凄い!を連呼しながら走って近づく。俺はそんな詩を見ながらひやひやしていた。
「走るなって」
「だって!これが時計台なんでしょ?!みんなが言うより十分立派だよ!凄い」
 小学生のようにはしゃぐ詩を見て外国人の観光客が温かい目線を送っていた。
それにも気が付かない様子の詩のことを写真に収めた。
すると
「写真、撮りましょうか」
と、どう見ても外国人なのに流暢な日本語を話す女性が声を掛けてきた。
 俺は大丈夫です、と言ったがそれに気が付いた詩が「是非!」と言った。
長髪の美人な女性は俺から半ば強引にスマートフォンを奪うと詩の隣に並ぶように言った。
「早く!蒼君」
詩の横に立つと、若干の距離を取って固くなった頬の筋肉を緩めた。
 数枚写真を撮ってくれた女性にお礼を言うとその場を後にした。