ショッピングモール内で先に昼食を食べることにした。
ハンバーグが食べたいという詩の要望で洋食屋に入る。詩は何を食べたいかと訊くと何でもいいよと言った後に必ずハンバーグやラーメンなど具体的に答えてくれる。
彼女の何でもいいよは何でもよくないのだ。でも男の俺からすればその方が楽だ。女の子はよく察してほしい生き物だと以前テレビか何かで見たことがあるが、それは流石に難易度が高い。
「いらっしゃいませ」
店内は人で賑わっていた。何とか四人掛けの席に案内してもらえたもののこうも人が多いとソワソワする。人混みが苦手なわけではない。詩が間違えて人に触れてしまわないか心配だ。そもそもショッピングモールで買い物をするということはそれなりに人が多いのだから詩が誰かと接触するリスクが高くなる。
それでも連れてきたのは彼女の願いを何とかかなえたいからだ。
「水着買ったらすぐにここを出よう」
「うん?分かった」
終始心配している俺とは対照的に詩は呑気にソフトクリームも食べたいなどという。
「別にいいけど、なるべく早くここを出たい」
「どうして?せっかく買い物に来てるんだもん、蒼君も楽しもうよ」
「そういうわけにはいかないんだよ」
俺が語尾を強めると、むっと頬を膨らませ「蒼君も楽しんでほしい」という。
「もう十分楽しんでるよ」
「そう?ずっと辺りをきょろきょろ見渡しているし楽しんでいるようには見えないんだけどなぁ。だってこれってデートみたいなものでしょう?」
頬杖をつき、口元に弧を描く彼女は幸せそうでそれを見ているとこれ以上何も言えなくなった。
レストランを出て事前に調べていた水着も売っているというレディース用の店舗に来た。
詩はあまりファッションの知識はないようだ。そもそも思春期のほとんどを入退院を繰り返してきたのだから当たり前なのかもしれない。
「流行りとかあんまりわからないけど水着ならだいたい一緒だよね?」
「…だと思う」
曖昧に返事をする。他の店舗も回ってみていい水着があれば試着させてもらおうと思っていた。詩は直ぐにマネキンの来ている水色の水着を指さした。
「わぁ、見て。これ素敵じゃない?」
「うん、いいんじゃない?色も綺麗だし…ただ、」
ただ?と聞き返す詩に俺は何でもないといった。
購入前提でここに来ているのを若い女性の店員は直ぐに察知して俺たちに近づいてくる。
「何かお探しのものがございましたらお声掛けください」
「これ試着できますか」
「ええ、もちろんです。お客様はかなり細身ですので、一番小さいサイズを持ってきますね。あちらの奥の試着室でお待ちください」
俺たちは試着室前で移動する。詩はサンダルを脱いで試着室に入った。
女性もののこういう店に入ったことは一度もないし、ましてやそれが同い年の女の子の付き添いというシチュエーションは想像すらしたことがない。
周囲にどういう目で見られているのだろうと考えていると店員が水着を持ってきた。
先ほど俺が言いかけた言葉は“ただ…露出しすぎじゃない?”だった。
一般的な水着で、腰回りにはフリルがついている。
ただそれはビキニと呼ばれるもので可愛らしいフリルとは裏腹に露出部分が多いように思った。
そもそも、だ。水着と下着は隠している部分がほぼ一緒だ。
つまり、水着を周囲に見せるということは下着姿を見せているのと一緒だと思う。
そういうことを詩にいえばきっと『変態!そういう考えしないでよ』と言われそうで黙っておくことにした。
店員が詩に水着を手渡そうとするのを見てすぐさま俺が水着を手にした。
店員が驚いた顔をする。当たり前だと思う、こんなことをされたら誰だって驚くだろう。
だが、もしも詩の手に触れたらと考えると仕方がないのだ。
ハンバーグが食べたいという詩の要望で洋食屋に入る。詩は何を食べたいかと訊くと何でもいいよと言った後に必ずハンバーグやラーメンなど具体的に答えてくれる。
彼女の何でもいいよは何でもよくないのだ。でも男の俺からすればその方が楽だ。女の子はよく察してほしい生き物だと以前テレビか何かで見たことがあるが、それは流石に難易度が高い。
「いらっしゃいませ」
店内は人で賑わっていた。何とか四人掛けの席に案内してもらえたもののこうも人が多いとソワソワする。人混みが苦手なわけではない。詩が間違えて人に触れてしまわないか心配だ。そもそもショッピングモールで買い物をするということはそれなりに人が多いのだから詩が誰かと接触するリスクが高くなる。
それでも連れてきたのは彼女の願いを何とかかなえたいからだ。
「水着買ったらすぐにここを出よう」
「うん?分かった」
終始心配している俺とは対照的に詩は呑気にソフトクリームも食べたいなどという。
「別にいいけど、なるべく早くここを出たい」
「どうして?せっかく買い物に来てるんだもん、蒼君も楽しもうよ」
「そういうわけにはいかないんだよ」
俺が語尾を強めると、むっと頬を膨らませ「蒼君も楽しんでほしい」という。
「もう十分楽しんでるよ」
「そう?ずっと辺りをきょろきょろ見渡しているし楽しんでいるようには見えないんだけどなぁ。だってこれってデートみたいなものでしょう?」
頬杖をつき、口元に弧を描く彼女は幸せそうでそれを見ているとこれ以上何も言えなくなった。
レストランを出て事前に調べていた水着も売っているというレディース用の店舗に来た。
詩はあまりファッションの知識はないようだ。そもそも思春期のほとんどを入退院を繰り返してきたのだから当たり前なのかもしれない。
「流行りとかあんまりわからないけど水着ならだいたい一緒だよね?」
「…だと思う」
曖昧に返事をする。他の店舗も回ってみていい水着があれば試着させてもらおうと思っていた。詩は直ぐにマネキンの来ている水色の水着を指さした。
「わぁ、見て。これ素敵じゃない?」
「うん、いいんじゃない?色も綺麗だし…ただ、」
ただ?と聞き返す詩に俺は何でもないといった。
購入前提でここに来ているのを若い女性の店員は直ぐに察知して俺たちに近づいてくる。
「何かお探しのものがございましたらお声掛けください」
「これ試着できますか」
「ええ、もちろんです。お客様はかなり細身ですので、一番小さいサイズを持ってきますね。あちらの奥の試着室でお待ちください」
俺たちは試着室前で移動する。詩はサンダルを脱いで試着室に入った。
女性もののこういう店に入ったことは一度もないし、ましてやそれが同い年の女の子の付き添いというシチュエーションは想像すらしたことがない。
周囲にどういう目で見られているのだろうと考えていると店員が水着を持ってきた。
先ほど俺が言いかけた言葉は“ただ…露出しすぎじゃない?”だった。
一般的な水着で、腰回りにはフリルがついている。
ただそれはビキニと呼ばれるもので可愛らしいフリルとは裏腹に露出部分が多いように思った。
そもそも、だ。水着と下着は隠している部分がほぼ一緒だ。
つまり、水着を周囲に見せるということは下着姿を見せているのと一緒だと思う。
そういうことを詩にいえばきっと『変態!そういう考えしないでよ』と言われそうで黙っておくことにした。
店員が詩に水着を手渡そうとするのを見てすぐさま俺が水着を手にした。
店員が驚いた顔をする。当たり前だと思う、こんなことをされたら誰だって驚くだろう。
だが、もしも詩の手に触れたらと考えると仕方がないのだ。