暇つぶしのはずだったのに、いつの間にか詩との時間が大切で優先すべき対象になっていた。いいのか悪いのかわからないが、そんな自分は嫌いじゃない。
「分かった。今月末の分のお小遣い先に渡しておく」
 不審がっていたようだが、何とか了承を得て俺は安心した。
夕飯のカレーを食べ終えると「ごちそうさまでした」と言って二階へ上がっていく。
 母親が寝静まってから夜食の分ということでカレーを温めて詩の元へ運ぶ。
詩はいつも通り美味しそうに全て完食した。

♢♢♢

「アルバイト本当にお疲れさまだね」
「何とか終わったけど結構きつかった」
「そうだよね、蒼君結構へとへとだったもん」
「まぁそのお陰で何とか水着代と花火代は買えそうだけどね」
「ごめんね、せっかく稼いだお金なのに私のために使うなんて…」
「いいよ、水着みたいし」
「……」
 俺の隣を歩きながら、無言になった詩を横目で確認すると詩は照れたように顔を背けた。
十代高校生という一番体力がありそうな年代にも関わらず本屋の棚卸し作業のバイトをその場にいた誰よりもしんどそうにしながらも何とかやり切ったのを思い出す。
他の人はパートで働いている人たちだったからそれなりに慣れていたのだろうが、一番若いはずの俺が一番きつい顔をしていたようだ。
 今日は詩の水着を買いに来ていた。休日を避けて平日にショッピングモールに来ていたが、夏休みのせいか学生が目に付く。この間の映画の時は同じ学校の生徒どころか一年生の頃一緒のクラスだった女子に会ってしまったからそういうことは避けたいと思った。

「水着なくてもいいんだけどね…、だって蒼君のハーフパンツとか借りて浅瀬で遊ぶだけでも十分じゃない?」
「でもそれだと泳げなくない?いいの?」
「うーん。そう言われると…」

 あんなにもノリノリだったくせに、いざショッピングモールに到着すると申し訳なさが勝るのかなくてもいいという。
ここまで来たら買うしかないじゃないか、それに俺だって詩の水着姿は見たい。