やはり予想は当たっていたようで、今日の夕飯はカレーライスだった。
サラダとカレーライスがテーブルに置かれてあり、母親は既にダイニングテーブルの前に座っていた。
「先に食べてていいって」
「せっかく何だから一緒に食べた方がいいに決まっているでしょ。蒼、今日朝からどこに行っていたの?もう講習ないんじゃないの?」
 椅子を引きながら「別に」と返したが内心既にバレているのではないかと思った。
別に悪いことをしているわけではない。アルバイトだって、短期のものだ。
だが、内緒にしているという罪悪感に近い感情はもちろんある。
 母親は俺を一瞥してカレーライスをスプーンで掬い口に運ぶ。

「いただきます」
静かにそういって食べ始める。
「講習はないけど…友達と遊びに行っていた」
「友達?へぇ、そう。それならいいけど」
「あのさ、小遣い前借りってできる?」
 母親が顔を上げた。驚いているようにも見えるが、怪しんでいるようにも取れる表情で俺を見つめる。

「急にどうしたの。足りないってこと?」
「…まぁ、そう。夏休みだしみんなで遊んだりするじゃん」
「確かにそうだけど…でも変なことに巻き込まれたりしてないわよね」
 自分に興味がない母親でもさすがにいつもと様子の違う息子に気が付いたのか、不信感をストレートにぶつけてくる。
「してない。そもそも俺の学校不良とかいないじゃん」
「そういうことじゃなくて」

 要するに“虐め”にあっているのではないかと心配しているようだ。まぁ、確かに友人はいないし皆が俺を避けているのは事実だから当てはまらないこともない。
「大丈夫、そんなんじゃない」
即答で母親の心配していることを否定した。
 短期のバイトを増やすつもりではあるが、あまり増やし過ぎても詩との時間が取れないのだ。