詩がちょこんと座椅子に座りながらローテーブルに教科書を広げて勉強していた。
その光景に思わず大きな声が出そうになるがぐっと堪えた。
「何してんの?母親がここに来たら…―」
「おかえり!アルバイトお疲れ」
「いや、だから…」
詩は勝手に教科書類使ってごめんね、と俺が怒っている方向とは真逆の謝罪をする。
鞄を床に無造作に置くとドカッとベッドの縁に腰かけ、大きく息を吐く。
「うちの母親に見つかったらどうするんだよ。多分俺の部屋には入らないだろうけどさ」
「大丈夫だよ、もし見つかったら…友達ですって言うし」
「俺が不在で友達って変だろ、しかも女子って」
「じゃあ彼女って言うもん」
「もんじゃないよ、彼女じゃないだろ。嘘はやめろよ」
「でも私別に彼氏が蒼君でも全然いいよ」
「…っ」
不意を突くような発言が多い。詩は狙ってそういう発言をしているわけではなさそうだから本当に“小悪魔”なのかもしれない。
俺はふいっと顔を背ける。詩は教科書類を片づける。
「どうだった?アルバイト」
「大変だったよ、二度とやりたくない」
「あははは、確かに訊く限りしんどそうだね。ごめんね、私のために」
「別に詩のためじゃない」
「だって、水着買ってくれるんでしょう?私のためでしょう?」
無言で俺はベッドの上に背を預ける。
無言というのは肯定を意味することは分かっていたがそう思われてもいいやと思った。
「今日の夕飯は何?」
「カレーライスだと思う」
「やったー、好きなんだよね」
「ていうか何で勉強してたの?」
首だけ詩の方へ動かし、聞く。詩は即答した。
「だって、最後の方は学校へ行くどころか勉強も出来なかったから。学生の本業は勉学ですからね」
そう言ってウインクをする彼女にまた不覚にも可愛いと思ってしまったことは内緒だ。
「蒼君も勉強しないとダメだよ」
「分かってる」
「講習も終わったから次学校へ行くのは夏休み明けか…。一応その時はまだ私消えてないんだよね」
「…うん、そうだと思うよ」
「じゃあちゃんとサボってないか確認できちゃうわけだね!」
「行くって言ってるだろ。もうサボらないよ」
「本当かなぁ」
疑い深い目を向けながらも楽しそうな詩に俺まで口元に笑みが浮かんでいた。
下から「ご飯出来たわよ」という声が聞こえ、俺はがばっと上半身を起こしてすぐに部屋を出て階段を下りる。
その光景に思わず大きな声が出そうになるがぐっと堪えた。
「何してんの?母親がここに来たら…―」
「おかえり!アルバイトお疲れ」
「いや、だから…」
詩は勝手に教科書類使ってごめんね、と俺が怒っている方向とは真逆の謝罪をする。
鞄を床に無造作に置くとドカッとベッドの縁に腰かけ、大きく息を吐く。
「うちの母親に見つかったらどうするんだよ。多分俺の部屋には入らないだろうけどさ」
「大丈夫だよ、もし見つかったら…友達ですって言うし」
「俺が不在で友達って変だろ、しかも女子って」
「じゃあ彼女って言うもん」
「もんじゃないよ、彼女じゃないだろ。嘘はやめろよ」
「でも私別に彼氏が蒼君でも全然いいよ」
「…っ」
不意を突くような発言が多い。詩は狙ってそういう発言をしているわけではなさそうだから本当に“小悪魔”なのかもしれない。
俺はふいっと顔を背ける。詩は教科書類を片づける。
「どうだった?アルバイト」
「大変だったよ、二度とやりたくない」
「あははは、確かに訊く限りしんどそうだね。ごめんね、私のために」
「別に詩のためじゃない」
「だって、水着買ってくれるんでしょう?私のためでしょう?」
無言で俺はベッドの上に背を預ける。
無言というのは肯定を意味することは分かっていたがそう思われてもいいやと思った。
「今日の夕飯は何?」
「カレーライスだと思う」
「やったー、好きなんだよね」
「ていうか何で勉強してたの?」
首だけ詩の方へ動かし、聞く。詩は即答した。
「だって、最後の方は学校へ行くどころか勉強も出来なかったから。学生の本業は勉学ですからね」
そう言ってウインクをする彼女にまた不覚にも可愛いと思ってしまったことは内緒だ。
「蒼君も勉強しないとダメだよ」
「分かってる」
「講習も終わったから次学校へ行くのは夏休み明けか…。一応その時はまだ私消えてないんだよね」
「…うん、そうだと思うよ」
「じゃあちゃんとサボってないか確認できちゃうわけだね!」
「行くって言ってるだろ。もうサボらないよ」
「本当かなぁ」
疑い深い目を向けながらも楽しそうな詩に俺まで口元に笑みが浮かんでいた。
下から「ご飯出来たわよ」という声が聞こえ、俺はがばっと上半身を起こしてすぐに部屋を出て階段を下りる。