すると詩は自ら言ったくせにぼんっと効果音が聞こえてきそうなほど顔を真っ赤にした。
それを見ると俺も何だか羞恥心で顔に熱が宿る。
数分無言でオムライスを食べ進める。俺がごちそうさまでしたと言うとようやく詩が口を開いた。ちなみに詩は意外と食べるのが早くて俺とほぼ同じタイミングで完食した。
「とにかく、俺も夏休み期間は暇だし講習もあと少しで終わる。だから詩のやりたいことに付き合うよ。家族に手紙書いたら?俺が渡すよ」
「簡単に言うけど学校も違うのに接点なんかないでしょ?私だって一応携帯電話持っていたけど友達の連絡先なんて一人しかいなかったし。お母さんもお父さんも不思議がると思う」
「でも俺詩のお母さんには一度会ってる。ほら、あの日」
あぁ、と思い出したように声を出し懐かしむように顔を緩ませた。
「確かに初めて蒼君に出会った時、私の家に連れて行ったんだよね。ちょうど通夜が行われる日で」
「そうそう。タイミング悪く詩のお母さんが出てきて、もう少しで通夜が始まるからって」
「ふふ、お母さんあんまり人を疑ったりしないから。多分大丈夫。お父さんは真逆だから…疑われそうだけど基本日中はお母さんしかいないから日中に家に行けば大丈夫かも」

 一週間ほど前のことなのにもうかなり昔のことのように思えた。

「分かった!手紙書いてみる!」
「ちょうど便箋とか余ってたと思う。探してみる」
「ありがとう」

 昼食後、俺の部屋を隈なく探し便箋と封筒のセットを発見した。小学生くらいの時に授業か何かで使うために購入したものだから正直物凄く綺麗な状態ではなかったが、保存状態が良かったのか意外と使えそうだった。クローバーの柄の封筒だった。
「素敵な封筒だね。可愛い」
「なら良かった。これでいいか」
「うん、大丈夫」

 詩に封筒セットを手渡し彼女は俺の机に座り手紙を書いていた。
見るつもりはなかったのだが、書いている姿勢があまりにいいので座椅子に座りながら彼女にチラチラ視線を送る。
十分程度経過したとき、詩が唐突に言った。
「ねぇ、もう一セットない?」
「ごめん、それで最後」
「だよね…ありがとう」
「足りない?足りないなら買ってくるけど」
ペンを使って書いていたからもしかすると字を間違えてしまいそう言ったのかと思った。しかしどうやら違うようだ。
「もし他にも封筒と便箋があればほしいなぁ。ルーズリーフでもいいんだけど」
「うん、わかった」

 一階に行けばあるかもしれないと思ったが、今必要なわけではないらしく後で探すことになった。