「ご飯食べよう!一緒に」
「うん」
「今日も暑いみたいだね、確かに窓からの日差しが凄い」
 詩はリビングから窓を見てそう言った。
鞄類を部屋に置いてからまたリビングに戻ると、詩が昼食のオムライスをダイニングテーブルに並べていた。
朝食も昼食も夕食も、全てが胃に固形物を入れるためだけの行為だったのが詩といると違う。詩と一緒にいると自然に笑顔が増え特に食事の時間が楽しみになっていた。
 詩だけに作らせるのも気が引けるから俺も手伝うようになったから少しは料理の知識が増えたようにも思う。

「オムライスだよ~ケチャップで名前書いていい?」
「いいよ」
 詩は鼻歌を歌いながら俺のオムライス“あおいくん”とケチャップでかく。
そしてその隣にハートを添える。

「小悪魔だな」
「何が?普通だよ」
「誰にでもやるっていうところが」
「心外だなぁ。私は蒼君にしかしてないでしょう?」
 ふんっと鼻を鳴らして俺の正面に座る。
「いただきまーす」

とほぼ同時に手を合わせいつも通り食べ始める。詩はこんなに食べているのに相変わらず腕も首も細くてもしも本当に生きていたらもう少しふっくらするのかなとか想像した。
でもそのたびにそんなことを想像するのは意味のないことだと自分に言い聞かせた。
「どう?美味しい?」
 詩は必ずそう訊く。俺は美味しいよと感想を伝える。それだけなのに詩は世界で一番幸せそうな顔をする。
「そうだ、詩。親友と両親に手紙書くんじゃんかった?」
「…あぁ、そうだね。でも…書いてもなぁ。渡したらびっくりするかなって」
「それなら俺が渡せば解決じゃん。やり残したこと、あと三週間弱でやり切らないといけない」
「それは気にしないで。蒼君に全部かなえてもらおうなんか思ってないよ。結構お金使わせちゃってるし」
「そんなの今更だろ。今日講習終わってそのまま面接行ってきた。バイトの」
「ええ?!バイトの面接もあったんだ」
「そうだよ。昨日夜履歴書書いてただろ」
「そうだっけ?私昨日眠くなってすぐ寝ちゃったから」

それで?と詩はそのあとが気になるようで続けた。

「その場でオッケー貰った。本屋の棚卸し作業だから短期だしその日に給料もらえるから旅行も海も何とかなるよ」
「本当?!」
「本当。でも詩は泳げるの?」
「うーん、それはね、多分泳げないんだけど浅瀬で遊ぶだけで十分だよ!」
「じゃあ水着買おう。バイトの給料で」
「いいの?」
「いいよ」
「私の水着姿見たい?」

 意地悪な質問をする詩はニヤニヤしている。ここで目を逸らしたり話を逸らしたら負けな気がして「見たい」と言った。