今日の講習は午後14時には終了した。
誰とも喋らずに学校を出てそのまま自宅に帰宅する。
詩は俺の部屋でおとなしく少女漫画を読んでいたようで、俺が帰宅すると「おかえり!」と嬉しそうに俺に駆け寄る。
主人の帰りを待つ子犬のようだと思った。
相変わらずサラサラの黒髪がぴょんぴょんと飛びはねるたびに揺れていた。
「どうだった?!どうだった?!」
「どうもないって」
「ええ~久しぶりなの?学校に行くのは」
「そうでもないよ、それなりに行ってるけど講習は初めて」
「良かったね!嫌なこといってくるやついた?」
「…いない」
詩は本気で嫌なことを言ってくる人に文句を言ってやるつもりだ。
『あいつに関わるのはやめておこうぜ』
『なんで来たんだろう…』
ああいう一つ一つが“嫌なこと”に入るのか考えるが入らないだろうと自分に言い聞かせる。
そもそも俺が悪いのだ。誰だって“あんなこと”をした俺が悪いと思うだろう。
「本当に?…」
「本当だって。それより昼食食べた後、デートいこう」
詩は嬉しそうに頷いた。
デートと言っても函館市内でそれっぽいことが出来るのは映画館くらいだろう。
バスで函館駅まで向かってから市電を使って映画館に向かう。
その間、詩はずっとソワソワしているようだった。
「デート…デート…」
と、独り言を言う彼女が可愛くなってきた。いや、最初から可愛いのだけど。
「デートって、やっぱりカップルとか好きな人とかとするでしょう?」
「うん」
市電を下りてから詩が俺の一歩先を歩きながらそう言った。
触れないようにだいたい詩が俺よりも先を歩くのが決まりになっていた。
「だから私、蒼君に恋することにした!」
「…俺?」
「そうそう、それか彼女っていう設定でデートする!」
「…分かった」
「だから蒼君も彼氏っぽい感じで接して?」
「彼氏っぽい感じって何だよ」
「彼氏っぽい感じだよ!わかんないならこの間の漫画全部読んでみて」
「嫌だよ」
そう言いながら、詩が彼女だったらと想像した。
きっと詩は詩だから何も変わらないのだけど、彼女がいる世界は少しだけ…楽しいと思えた。
「でも…」
うん?と彼女を見据える。詩はどこか寂しそうに手をさし出した。
細くて綺麗な手が目に入る。
「でも…手は繋げないね」
そうだな、と答えた。彼女は触れたら消えてしまう。だから絶対に触れられないのだ、絶対に。
誰とも喋らずに学校を出てそのまま自宅に帰宅する。
詩は俺の部屋でおとなしく少女漫画を読んでいたようで、俺が帰宅すると「おかえり!」と嬉しそうに俺に駆け寄る。
主人の帰りを待つ子犬のようだと思った。
相変わらずサラサラの黒髪がぴょんぴょんと飛びはねるたびに揺れていた。
「どうだった?!どうだった?!」
「どうもないって」
「ええ~久しぶりなの?学校に行くのは」
「そうでもないよ、それなりに行ってるけど講習は初めて」
「良かったね!嫌なこといってくるやついた?」
「…いない」
詩は本気で嫌なことを言ってくる人に文句を言ってやるつもりだ。
『あいつに関わるのはやめておこうぜ』
『なんで来たんだろう…』
ああいう一つ一つが“嫌なこと”に入るのか考えるが入らないだろうと自分に言い聞かせる。
そもそも俺が悪いのだ。誰だって“あんなこと”をした俺が悪いと思うだろう。
「本当に?…」
「本当だって。それより昼食食べた後、デートいこう」
詩は嬉しそうに頷いた。
デートと言っても函館市内でそれっぽいことが出来るのは映画館くらいだろう。
バスで函館駅まで向かってから市電を使って映画館に向かう。
その間、詩はずっとソワソワしているようだった。
「デート…デート…」
と、独り言を言う彼女が可愛くなってきた。いや、最初から可愛いのだけど。
「デートって、やっぱりカップルとか好きな人とかとするでしょう?」
「うん」
市電を下りてから詩が俺の一歩先を歩きながらそう言った。
触れないようにだいたい詩が俺よりも先を歩くのが決まりになっていた。
「だから私、蒼君に恋することにした!」
「…俺?」
「そうそう、それか彼女っていう設定でデートする!」
「…分かった」
「だから蒼君も彼氏っぽい感じで接して?」
「彼氏っぽい感じって何だよ」
「彼氏っぽい感じだよ!わかんないならこの間の漫画全部読んでみて」
「嫌だよ」
そう言いながら、詩が彼女だったらと想像した。
きっと詩は詩だから何も変わらないのだけど、彼女がいる世界は少しだけ…楽しいと思えた。
「でも…」
うん?と彼女を見据える。詩はどこか寂しそうに手をさし出した。
細くて綺麗な手が目に入る。
「でも…手は繋げないね」
そうだな、と答えた。彼女は触れたら消えてしまう。だから絶対に触れられないのだ、絶対に。