靴を履き替え、夏休みだというのに制服姿の生徒が普段と変わらず談笑しながらクラスへ向かっていく。全学年講習は必須で、三年生と二年生は一年生よりも一週間期間が長い。
受験期であるから仕方がないがそう長くはない夏休みでほぼ講習というもの生徒からすれば酷な話ではある。
 クラスの前まで来るとやっぱりこのままサボろうかなとか邪な考えが浮かぶ。
が、同時に詩の顔が浮かぶ。

サボったことがバレたらきっと怒るのだろうなと思うと引き返すなど出来なかった。
ガラガラとドアがレールの上を走る音が響き、それまでお喋りしていた女子や男子が一斉にこちらを見た。
 突き刺さるような視線は俺を食いちぎるように注がれる。
一向に逸らされることはなく、俺の方から視線を床に落とす。

「え、講習に来たの?なんで?」
「さぁ?」
「関わるのやめようぜ、だってあいつ…」
「誰も関わりたくなんてないだろ」

 コソコソと俺のことを話しているのはわかっている。雑音をシャットダウンするようにイヤホンを耳に突っ込んだ。
音は流れていないのだから、聞こえると言えば聞こえるのだが俺はそのまま机に突っ伏した。その後少しして数学担当の先生が教室に入ってくる。
事前にやっておくはずの課題のページは空白だ。
 白髪の先生が教壇に立つ。
俺はちょうど窓側の席だったから授業が始まると窓の外をボーっと見ていた。
今日の目標はとりあえずクリアした。