「良さがわからないんだけど」
「蒼君に良さが分かったらおかしいよ、だって男の子でしょう?」
「そっか」
「そうそう」
「ひゃ~カッコいいよ~」

 もう俺なんか置いてけぼりで一ページ一ページ噛み締めるように読み進め、彼女的お気に入りポイントがあればそこで「ひゃぁ」とか「きゃあ!」とか首まで赤らめて悶絶している。
それをじっと見ている俺も傍から見ればおかしい男なのかもしれない。
 でも全く飽きなかった。
詩のコロコロと変わる表情も俺には理解できないけどキュンとするポイントで悶絶している姿も全く飽きないのだ。
アイスティーの氷が既に解けはじめ水滴を作り出す頃、ようやく詩は顔を上げた。

「残りはあとで読むよ。今日はありがとう。楽しかった」
「いいえ、楽しかったなら何よりです」
「いいなぁ、いいなぁ。私も恋したかったなぁ」
「そういえばやり残したことの項目最後だけ空白だったけどあれ何?」

 詩はかぶりを振って「秘密」と言った。
空白ということはそもそもなかったのか生きていなければ出来ないことなのか…。
気にはなったが俺は詩と一緒に店を出た。
二日間充実していたように感じる。