「ごめん」と何度目かの謝罪をしたとき、思いついた。
「分かった、あと何巻必要なんだっけ?」
「五巻だけど…」
「それ俺買うよ、近くに本屋あっただろ」
「うん…あったけど」
「じゃあそこ行こう」

 俺は大股で先に進む。詩が小走りでついてきているのに気が付き歩幅を詩に合わせる。
少女漫画が大好きだという彼女はやっぱりどこにでもいる高校生で生きていたら友達とキャッキャ言いながら買い物をしたり漫画を読んだりしたのかなと思うと悲しくなった。
どうして彼女だったのだろう、と。

 函館駅から徒歩三分ほどで書店に到着した。詩は店内に入ると直ぐに漫画コーナーに行く。
家族に妹や姉がいるわけではないからこういった女の子が好む漫画を購入したことはない。
「あった!これだよ、これ!」
「…マジで?」
「わぁ、完結しちゃったんだよね…はぁそれも寂しいけどこうやっていなくなる前に読めるのは幸せ!」
詩はそう言うと女の子が男の子に迫られて顔を紅潮させている表紙のそれを手にする。
十巻まで手にすると「本当にありがとう」という。
 詩の顔が彼女の手にしている少女漫画の表紙にある少女と同じ顔をしていた。
不覚にも可愛いと思ってしまう。
「会計してくる。ここで待ってて」
「分かった」

 俺は彼女の手に触れないようそれを受け取るとレジに向かう。
そこでようやく気が付いた。
「こちらすべてカバーはお掛けしますか?」
「…いえ、結構です」
「かしこまりました」
 こんな表紙の少女漫画を俺の趣味で購入したと思われるのではと思ったがレジの店員は顔色一つ変えずに会計をする。会計後、俺は二つ折りの財布をじっと見つめながらつぶやく。
「…小遣い足りない」
よく考えてみるとこの一か月間、詩の願いを叶えるとなると小遣いが足りないのだ。
 母親にいえばきっとくれるのだろうけど、理由を訊かれると困るしそれにも限度がありそうだ。

「うわぁ!ありがとう!ねぇすぐに読みたい!」
「いいよ、近くのカフェにでも行こう」
 本屋を出て、市電が通っているのを視界に捉えながら俺たちは近くのカフェに向かった。
夏休みということで学生がそれなりに多くいる。
同じ高校の部活ジャージを着ている生徒をちらほら見かける。
 詩はこじんまりした個人店のカフェに入ると直ぐにそれを読み始めた。
詩は紅茶、俺はコーヒーを頼んだ。
 詩は真剣に、だけど表情をコロコロ変えて読んでいた。
そんなに面白いのかと彼女の読み終わった漫画を借りて数ページ読むが全く良さがわからない。