僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 豪介はずっと疑問に思っていたことを牧園さんに聞いた。一度目のビンタはコンビニネコババ事件の犯人を教えた時のことであれは自分でもわかっていたが、2回目のビンタはどうしてなのか全然わからなかった。牧園さんは自分の携帯に保存していた写真を出して豪介に見せた。
『こんな嫌がらせをされていたのか…』
 下手くそな合成画像だったが、顔だけは牧園さんなので豪介は興奮してしまい牧園さんの顔を見られない。自分の顔が赤くなっていくのがわかる。体が勝手に反応してしまう。ドキドキしながら豪介はこんなことをするやつの心当たりがあるのか聞いてみた。
「ない」と、牧園さんが言うと、
「ある」と豪介は言った。驚いたのは牧園さんの方だった。
「あるって、どういうこと?」
 豪介は、牧園さんが蔵持銀治郎を振った時のことを話した。
「あの時、牧園さんが去って行くときに銀治郎の口から出た言葉が「チッ、あいつ、ふざけやがって、デスってやる…」だったんだ。これって、復讐する時の言葉だよね」
「うん」
「いかにもあいつがやりそうなことだよ。もしかしたら唯ちゃんのことだって銀治郎が関わってるかもしれないよ」
「どうして?」
「だって唯ちゃんは牧園さんの友達でしょう。牧園さんは変態画像を作られてもあまりショックを受けなかったから一番傷つくことを考えたんじゃないのかなぁ。つまり友達を苦しめること。あいつはそうやって人が困ったり、苦しんでいるのをニヤニヤして見ているようなやつなんだ。げんに僕だって」
「ゴンスケも何かやられたの?」
「うん。あっ、でもそれはいいや」豪介は典子のことが頭をよぎったがそれを牧園さんに話す気にはなれなかった。
「ゴンスケ、やっぱ頼りになる」と言って牧園さんは豪介の両手をまた握った。

 ドキン!

 こんなことが続くといつか自分の心臓に穴が開くのではないかと思う。ただ、自分からこの手を引っ込めるようなことはしない。力を入れずに牧園さんにこの手を委ねる。
「頼りにしていい?」
 握られた手に力がこもった。そして今まで見たことのないような優しくて、ちょっと弱さがあって、それでいて内に正義を秘めて、しかも自分を頼りにしている、そんな目で見つめられた。
「あっうん、多分大丈夫!」
 とっさに出た返事の言葉だった。
 月曜日の放課後に牧園さんと待ち合わせの約束をしてこの場は別れた。