僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 本来ならあぁやって帰るのは久保田ではなく自分だったはずなのに、自分は久保田よりもダメな男だと見せつけられているようだった。
『学年一ブスな女子と釣り合いの取れる男、久保田』
 そう思おうとしたが、それよりも女子と付き合っているという事実の方が羨ましかった。同時に友情よりも彼女をとった久保田に寂しさを感じた。
『久保田…』
 唯一の友達が去ってしまった。
 豪介の心が地の底に落ちて跳ね返って宇宙空間に放り出された。たった一人の孤独。これ以上ない孤独。自分の周りに誰もいない闇しかない孤独を感じた。

7月7日 土曜日 期末テスト翌々日
 土曜日、牧園ゆかりは久しぶりにコンビニのアルバイトに入った。父親と母親は「お金が必要ならいつでも言ってね」とは言ってくれるのだが、やはり自分の自由になるお金を自分で稼ぎたかったし、何かの記念日には父や母、それに弟のプレゼントも自分の稼いだお金で買ってあげたい。期末テストでなかなか入れなかったシフトも夏休みにはちょくちょく入れてもらおうと思っていた。
 モップをかけながら仕事に集中しようと思うのだが、唯のことがずっと気にかかる。あれから唯にちょくちょく電話をするのだが電話に出ることなく、心配ばかりがつのる。それに、あの職員室にいた先生達の重たい空気も…。不安が心をかき乱し、どうにも落ち着くことができない。
 夕方になりバイトが終わる時間になると、店長がニヤついた顔で近寄って「牧園さんにも言っとかないとね」と話しかけてきた。
「なんですか店長?」
「レジのお金が合わなかった件なんだけどね」
「はい」
「あれね、わかったんだよ。徳永君と大原君だったんだ。どうもねぇおかしいと思ったんだよ」
「!」牧園ゆかりは徳永と大原という言葉に引っかかった。以前二人の名前を聞いたことがある。それもネコババしている犯人だと教えてもらった気がする。
『あれ、誰から教えてもらたっけ?』
「どういうことですか?」
「有田君が二人がちょろまかしてるところを見たっていうんだ。それで徳永君が謝りにきたんだよ」
「それ、いつの話なんですか?」
「あぁ、そうだね、かれこれ2週間前になるかな」
 ゆかりは2週間前と言ったら『そうだ、ゴンスケが確かそんなことを言っていた』と思い出した。