『同じクラスだと容姿が中の中の高山紅葉あたりが妥当なところか、それとも…、中の上あたりの大場亜美あたりを言ってくるかもしれない…』
「２組の末松典子だなぁ」
　豪介は目の前が真っ暗になるほどの衝撃を覚えた。
『な、なんてことを言うんだ！　典子だなんて、よりによって、よりによって典子だなんて！　典子は、学年１のブスじゃないか！』
　銀治郎と優斗が笑っている。美咲は声にこそ出さないが、気持ちは二人と同じようだ。三人が自分をディスって楽しそうにしている。それよりも何よりも…。
『僕があの典子とお似合いだなんて…。学年一のブスがお似合いって、それでは僕は、僕は最下層じゃないか』
　自分が銀治郎たちのような階層にいないことは十分わかっていた。だけど、だけど…。自分の置かれた立ち位置を嫌というほど認識させられ目の前が暗くなった。

　２組の昼休みでは末松典子と中村芽衣が仲良く話し込んでいた。芽衣は可愛く典子とは容姿も性格も全然違うのだが中学の時から二人は気が合った。勉強よりも部活よりもお笑いよりもアニメよりも二人は共通して噂話が好きで、特に男子のことについて話をするのが好きだった。典子が周りに聞こえないように小声で芽衣に聞く。
「ねぇ、彼氏とはうまくやってるの？」
「うん、まあね」
「どうやって付き合い始めたの？」
「ナンパ」
「へぇ、そうなんだ」
「そうだよ」
「付き合う時ってどんな感じ？」
「もしかして典子、誰か好きな人いるの？」
「…うん」
「誰、誰よ？」
「まだ言えない」
「この学校」
「うん」
「どこが好きなの？」
「顔かな…」と言って顔を赤らめた。
「もしかして銀治郎？」
「うぅん、私格好いい人趣味じゃない」
「典子告るの？」
「でも、ふられたら怖い。私ブスだから」
「典子は彫りが深いからなぁ。二十歳過ぎたら変わるよ」
「そんなに待てないよ」
「そうよね、好きになったら待てないよね…」
「どうしたらいい？」
「友達を使って攻めてみたら」
「そっか…。友達かぁ…。うんそうだね、こんな時は友達よね」
　などと話し、その後はまた誰と誰が付き合っている、他のクラスでは誰がカップルになったと二人の話は尽きない。

　放課後、久保田治が一緒に帰るために豪介の元に近寄ってきた。