三島先生はさらに携帯を操作して、息子と検索して今撮った国語のテスト、それから保存されている写真から英語のテストを送信した。メッセージには【勉強頑張れよ】と書いていた。
『誰だ、いったい誰に送ったんだ?』
「あいつ英語が苦手みたいでね。教師として失格なんですが、なんて言うか、家族を壊した罪滅ぼしとでも言うか…」
「いずれ、三島先生の気持ちもわかるし、自分のしていたことの間違いにも気づきますよ。その時人間として成長するかどうかは本人次第です」
「そうだといいんですが…。まっ、あいつには、あいつの人生が待っているか…」
「そうですよ」
「ですね。それよりも」
「はい」
「結婚式の日程なんですが…」
『何、三島先生と近藤先生が結婚するのか!』いまどうでもいい大スクープまで聞いてしまった。
「豪介、あんた全然勉強してないじゃない。いつまでお風呂に入ってるの! 次お母さんが入るのよ」
風呂でうたた寝していた豪介は母親の怒鳴り声で目が覚めた。
7月1日 日曜日 期末テスト三日前
日曜日はどんよりとした雲が垂れ込め、いつ雨が降り出してもおかしくないそんな天気だった。だが山形大悟はそんな天気を気にする素振りもなく、待ち合わせの丸池公園に急いだ。
この公園は大悟が通っていた中学校といま通っている高校の間ぐらいにあり、この近辺では一番大きな公園で、市民の憩いの場になっていた。イチョウ、ケヤキ、桜といった木が植樹されていて、これらの木が目隠しとなり道路からは奥の方までは見えない。その木々の奥にはレンガが敷き詰められた広場があり、子供たちが自転車の練習をしたり時折親子がキャッチボールをしている。さらにその奥は公園の名前の由来にもなっている大きな丸い池があった。その池の真ん中には橋を渡って行ける人工の島があり、遊歩道を歩けば散策が楽しめるようになっている。遊歩道と池の間は木の杭に張られたロープがあるだけで、手を伸ばせば池の水に触ることもできる。公園内の所々にはベンチが設置されていて誰でも座って休めるようになっていた。
大悟は大きな銀杏の木の下のベンチに座っていた。いつも待ち合わせの時間の30分前には公園に着き、このベンチに座って彼女が来るのを待っていた。彼女はいつも時間ちょうどにやってくる。今日も大悟が待っていると、向こうから手を振りながらやって来た。
「大悟君、待ったぁ」
『誰だ、いったい誰に送ったんだ?』
「あいつ英語が苦手みたいでね。教師として失格なんですが、なんて言うか、家族を壊した罪滅ぼしとでも言うか…」
「いずれ、三島先生の気持ちもわかるし、自分のしていたことの間違いにも気づきますよ。その時人間として成長するかどうかは本人次第です」
「そうだといいんですが…。まっ、あいつには、あいつの人生が待っているか…」
「そうですよ」
「ですね。それよりも」
「はい」
「結婚式の日程なんですが…」
『何、三島先生と近藤先生が結婚するのか!』いまどうでもいい大スクープまで聞いてしまった。
「豪介、あんた全然勉強してないじゃない。いつまでお風呂に入ってるの! 次お母さんが入るのよ」
風呂でうたた寝していた豪介は母親の怒鳴り声で目が覚めた。
7月1日 日曜日 期末テスト三日前
日曜日はどんよりとした雲が垂れ込め、いつ雨が降り出してもおかしくないそんな天気だった。だが山形大悟はそんな天気を気にする素振りもなく、待ち合わせの丸池公園に急いだ。
この公園は大悟が通っていた中学校といま通っている高校の間ぐらいにあり、この近辺では一番大きな公園で、市民の憩いの場になっていた。イチョウ、ケヤキ、桜といった木が植樹されていて、これらの木が目隠しとなり道路からは奥の方までは見えない。その木々の奥にはレンガが敷き詰められた広場があり、子供たちが自転車の練習をしたり時折親子がキャッチボールをしている。さらにその奥は公園の名前の由来にもなっている大きな丸い池があった。その池の真ん中には橋を渡って行ける人工の島があり、遊歩道を歩けば散策が楽しめるようになっている。遊歩道と池の間は木の杭に張られたロープがあるだけで、手を伸ばせば池の水に触ることもできる。公園内の所々にはベンチが設置されていて誰でも座って休めるようになっていた。
大悟は大きな銀杏の木の下のベンチに座っていた。いつも待ち合わせの時間の30分前には公園に着き、このベンチに座って彼女が来るのを待っていた。彼女はいつも時間ちょうどにやってくる。今日も大悟が待っていると、向こうから手を振りながらやって来た。
「大悟君、待ったぁ」

