お風呂に入って体を沈めていると気持ちがリラックスしてきた。昼間は暑いぐらいに気温が上がるが、夜はまだ涼しく、窓を開けて入っていると顔に流れる夜気が心地よい。
『きっと今頃みんなお風呂に入っているんだろうなぁ…。もしこの時間に牧園さんと繋がったら…。いや、それはダメだ。それだけは自分のルールとしてやってはいけないことだ。でも小林美咲なら…、いやダメだ』
　変なことを考えそうになった豪介は強制的に違うことを考えることにした。週明けの期末テストのことを考える。でも、全然勉強していない現実を直視するのも辛かった。一学期の期末テストという重要さを考えれば本来はきちんと勉強しなければいけないはずなのだが…。三島先生も常日頃言っていた。月曜日に講堂でも言っていた。そういえばその時、デートがどうとか言っていたな、【てへぺろ】って、最悪だ。そう言えば今日は土曜日かぁ…。

　近藤麻里先生が自分を見つめている。
『！』
　あまりにも突然のことで驚く。しかも目の前の近藤先生は見慣れないお化粧をしていて、それもパールを使っているようで、目元なんかキラキラしていた。お化粧が顔から一センチ浮いているそんな感じだ。真っ白なクロスのかかったテーブルの上には一輪のバラの花が活けられていて、グラスには赤い液体が入っている。自分と繋がった人物がその赤い液体をくるくるくるくる回している。
　誰と繋がったのか…。それはもう明白に三島先生だ。つまりこれは、三島先生と近藤先生のデートだ。
『これは、きつい』とっとと繋がりを切ろうと思ったら…。
「毎回毎回こんなことをお願いして申し訳ないです」
「そんなこと言わないで、だって他人じゃなくなりますし…」
『何！』もう少しこのままでいることにした。
　近藤先生は鞄から取り出した封筒を三島先生に渡す。
「どうぞ」
『お金なのか？　これでは三島先生は紐ではないか！　見損なったぞ、三島先生！』
　三島先生が封筒を取り、中身を取り出す。白い紙が一枚出てきた。
『ん、お金じゃない』
　白い紙を三島先生が広げる。
『国語のテスト用紙だ…、なんだ？』
　三島先生が携帯を取り出し国語のテストを写真に撮る。
「こんなことは、父親失格ですね…」
『ん？　父親と言ったということは、子どもの話でもしていたのか…？』