僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 中学生の大悟は女子とどこかに行くのも初めてで、何を着ていったらいいのかわからなかった。野球観戦ならレプリカユニホームがいいのか、でも自分だけユニホームを着てみんながユニホームじゃなかったら一人だけ気合いを入れているみたいで恥ずかしい。しかし、みんながユニホームを着ていて自分だけパーカーだと一人だけ冷めているようでみんなに悪い。と、散々迷って、ユニホームを着ていくことにした。待ち合わせの地下鉄の駅に着くと、ユニホーム姿は自分一人だった。
 球場では六人が一列に座った。チケットを持ってきた友達が座席番号が見えないようにして「ほら、みんな引いて」と促した。大悟がチケットを引き、みんなもチケットを引く。大悟は一番奥、隣は大悟の好きな彼女だった。だがその隣も女子で自ずと大悟は一人取り残され、試合中ほとんど喋ることができなかった。他の五人は三人で喋ったり、二人で喋ったりしてそれなりに盛り上がっている。試合は5対3で地元の球団が勝った。ドーム球場を出たところで、今日の記念にとみんな集まり写真を撮った。みんなにバレないように大悟はなるべく彼女の近くによった。試合に勝ったこともありいい笑顔だった。
 帰り道、みんなでファミレスによってパフェを食べた。
 結局大悟がちゃんとした会話をしたのは「みんなどこの高校に行くの?」と聞かれた時に高校名を言った一言だけだった。それでも彼女と同じ高校だということがわかった。その時、彼女が言った。
「私バカだから、頭のいい人に憧れるんだ」
 中学を卒業する時に大悟は思い切って彼女に告白しようと考えた。大悟にとっては人生最大の決心で、背中を押したのは携帯の存在だった。中学を卒業するとその開放感と、別々の高校に行くという物理的な距離が離れる安心感からか皆気軽に携帯のメッセージで告白をし、またいとも簡単にメッセージだけで振られていた。大悟はみんながやっているのなら自分もできるのではないかと思い、メッセージを打っては消して、消してはまた打った。文章が長くなって短くして、これでは想いが伝わらないとまた長くした。結局周りの友達が使っている言葉を参考にして【好きなんだよねぇ。よかったら付き合わない】という自分らしくない言葉でメッセージを作り、夜中の12時に送ろうと10分前からカウントダウンして、結局次の日の夜中の12時に送信した。すぐに返事が返ってきた。