6月29日 金曜日
授業が終わると一緒に帰る約束をしていた久保田治が歯医者の予約を思い出し「悪い」と言ってさっさと帰り、花田豪介は一人で校門を出た。この日は蒸し暑く、夏が一足先にやって来たそんな感じだった。一年で一番陽が長く夕方といっても太陽が高い。週明けの期末テストを考えて、さすがに今週末は勉強しないとやばいなと思う心をジリジリと焼いていくようだった。
「ゴンスケ君」
国道沿いを暑さに負けてボッーとした頭でダラダラと歩いていると、女の子の声で呼ばれた。以前蔵持銀治郎に小間使いにされた嫌な記憶が蘇る。無視しようと思ったが、よく考えればあだ名で呼ばれている。すると間髪入れずにまた呼ばれた。
「ねぇ、ゴンスケ君」
豪介が振り向くとそこに末松典子がいた。
『Xデーがやってきた!』
ついにきた、と豪介は思った。
「ゴンスケ君、ちょっといいかな?」そう言うと、典子が前を歩き豪介を促した。
『告白されてしまう…。豪介君、好きです。付き合ってくださいって言われてしまう。それとも、まずは友達になってくれませんか…。とでも言われるのだろうか。それとも、好きな人はいるんですか…。この辺が導入になるのか』
とにかく、心の覚悟はできている。
豪介は典子と二人で歩き始めた。豪介にとっては初めて女子と二人での下校になった。
今からこんな日が毎日続くのかもしれない。その時、こんなに暑かったら駅前のあのたこ焼き屋でかき氷を食べるんだろうか。その時は、『僕がコーラで、典子がイチゴ…。ねぇ一口食べさせて、はいあぁあん』そんなことを考えて歩いていたら典子は大型スーパーの駐車場に入って行った。豪介は慌てて後をついて行く。
『いよいよなのか…』
敷地の一番ハズレの緑色のフェンスのそばまで来ると典子が立ち止まった。フェンスは所々錆びていて、豪介はきっとこのフェンスの色合いなんかをずっと覚えてしまうんだろうなぁと変なことを考えた。前に組まれた典子の手が柔らかそうだ。このあとこの手を取って帰ることになるのかもしれない…。
「ゴンスケ君、変な噂が流れてるよね」
「あぁ」間近で見る典子は、やはり異様に彫りが深くてバランスが悪い。でも、でも…。『典子が、可愛いい』
「ごめんね」
「いいよ、謝らなくても」
授業が終わると一緒に帰る約束をしていた久保田治が歯医者の予約を思い出し「悪い」と言ってさっさと帰り、花田豪介は一人で校門を出た。この日は蒸し暑く、夏が一足先にやって来たそんな感じだった。一年で一番陽が長く夕方といっても太陽が高い。週明けの期末テストを考えて、さすがに今週末は勉強しないとやばいなと思う心をジリジリと焼いていくようだった。
「ゴンスケ君」
国道沿いを暑さに負けてボッーとした頭でダラダラと歩いていると、女の子の声で呼ばれた。以前蔵持銀治郎に小間使いにされた嫌な記憶が蘇る。無視しようと思ったが、よく考えればあだ名で呼ばれている。すると間髪入れずにまた呼ばれた。
「ねぇ、ゴンスケ君」
豪介が振り向くとそこに末松典子がいた。
『Xデーがやってきた!』
ついにきた、と豪介は思った。
「ゴンスケ君、ちょっといいかな?」そう言うと、典子が前を歩き豪介を促した。
『告白されてしまう…。豪介君、好きです。付き合ってくださいって言われてしまう。それとも、まずは友達になってくれませんか…。とでも言われるのだろうか。それとも、好きな人はいるんですか…。この辺が導入になるのか』
とにかく、心の覚悟はできている。
豪介は典子と二人で歩き始めた。豪介にとっては初めて女子と二人での下校になった。
今からこんな日が毎日続くのかもしれない。その時、こんなに暑かったら駅前のあのたこ焼き屋でかき氷を食べるんだろうか。その時は、『僕がコーラで、典子がイチゴ…。ねぇ一口食べさせて、はいあぁあん』そんなことを考えて歩いていたら典子は大型スーパーの駐車場に入って行った。豪介は慌てて後をついて行く。
『いよいよなのか…』
敷地の一番ハズレの緑色のフェンスのそばまで来ると典子が立ち止まった。フェンスは所々錆びていて、豪介はきっとこのフェンスの色合いなんかをずっと覚えてしまうんだろうなぁと変なことを考えた。前に組まれた典子の手が柔らかそうだ。このあとこの手を取って帰ることになるのかもしれない…。
「ゴンスケ君、変な噂が流れてるよね」
「あぁ」間近で見る典子は、やはり異様に彫りが深くてバランスが悪い。でも、でも…。『典子が、可愛いい』
「ごめんね」
「いいよ、謝らなくても」

