僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

【典子もゴンスケに言うんだよ】
 豪介の心臓がドキンと跳ねる。心が熱を持ちカッーと熱くなる。
『Xデーは近い』

 夜、豪介が眠りにつくと誰かと繋がったようで、そこはどこかの公園だった。
「大原さんやめて!」
 目の前には暗い外灯に照らされた有田律子がいた。と言うことは、大原と呼ばれたこの男は大原純なのだろう。そういえば昼、典子と繋がったときに大原純と芽衣ちゃんが別れたことを知ってスカッとしたことを思い出す。
 大原は荒れていた。
 律子のこっちを見る目が怯えている。
『一体、どんな状況なんだ?』
「なんで俺たちのことがバレたんだ? おかしいだろ、あのバカな店長が気付くわけないんだから。お前が喋ったってこいつが吐いたんだよ!」
 大原がそう言って後ろを振り向くとそこには怯えきって震えている徳永伸也がいた。
「なぁ、徳永そうだろ? チクったんだろ、この女が」
 そう言うと大原は徳永の頬を平手で張った。ビシッという嫌な音が響く。
「おかげで俺は何万円も払わないといけねぇじゃねぇか」
 そう言ってまた徳永の頬を張っていく。
「しかも、誕生日プレゼントは買えねぇし」
 また頬を張る。
「芽衣とも別れるし」
 また張る。
「散々なんだよ、全部お前が有田に見つかるからだろ」
 また張った。徳永はされるがままに震えながら立っていた。
「当たり前じゃない、警察沙汰にならなかっただけでも良かったと思いなさいよ」と、律子は強がっている。
「うるせぇ!」大原の耳をつんざくような大声が響く。
「そ、そんな大声出して、すぐに警察がくるからね」
「うるせぇブス、真面目か!」
「いいな徳永、お前が弁償しろよ」
 そう言ってまた徳永の頬を2発3発と張っていく。
「わかったな」
「…はい」
 徐々に豪介にも状況が理解できてきた。同時に、あの時律子は気がついていたと知った。
『それじゃ、僕が牧園さんに言おうが言うまいが事件は解決していたことになる。僕がしたことは牧園さんに嫌われただけだった』ということもわかってきた。
「そんなことする必要ないわよ徳永君」
「なんだよ、それならお前が弁償するのかよ」
 と言うと律子が徐々に大きくなってくる。つまり大原が彼女の方へ近寄っているということだ。彼女が後ずさると、大原が「へへへ」と気味の悪い笑い方をした。
 豪介はもしかしたらやばいのではないかと思う。