僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 同じく3組の辛島優斗にも送られてきたようで、優斗は蔵持銀治郎を呼んでこの写真を見せた。
「見たかよこれ?」
「あぁ」
「これ牧園ゆかりだろ」
「面白いことする奴もいるんだなぁ」
「銀治郎いいのか?」
「別にいいんじゃねぇ。もう関係ねぇし」と言って銀治郎は笑った。
 花田豪介のところにはこの写真が送られてこなかったためにみんながなぜ携帯を覗き込んでいるのか分からなかった。
 突然教室の中に牧園ゆかりが入ってきて、そのまま一直線に豪介のところにやってくると、「階段の踊り場に来て」と声をかけ教室から出ていった。
 豪介は聞き覚えのある声にビクッとして顔を上げると、教室から出て行く牧園さんの後ろ姿が見えた。あまりの素早さに3組にゆかりが入ってきたことすら気がつかない人がほとんどだった。
 豪介はなぜ自分が牧園さんに呼び出されるのか見当もつかない。促されるまま階段の踊り場に着くと、牧園さんは振り向きざま、「変態!」と言って豪介の頬をビンタした。
 バシッ!
 乾いた音が階段に響き渡る。突然の衝撃とカッと熱をもつ頬に豪介はただただ混乱した。
 ゆかりは豪介の顔を見た。豪介のなんともとぼけたような顔が腹立たしい。昨日自分が殴ったことに対する復讐でこんなことをしたのだろうが、やることが下劣で最悪で最低だ。
「どういうつもりかわからないけど、許さないからね」
 豪介はジンジンする頬にようやく牧園さんにビンタをされたのだと気づき、『牧園さんと繋がったことを信じたのかもしれない』と咄嗟に考えて「ごめんなさい」と謝ってしまった。
「やっぱりあんただったのね。卑劣よ! それで復讐した気になってるの? 最低!」
 ゆかりは豪介に散々文句を言って、そして最後もやっぱり「変態! 二度と私の前に現れないで」と言い捨てて去って行った。
 豪介は初めてこんなに人から嫌われた。

 牧園ゆかりが1組に戻ってくるとクラスの女子がゆかりの元に集まってきた。
「ちょっとゆかり、変な写真送られてきたみたいだけど、大丈夫?」
「あたしのところにもきたよ」
「あたしのところもよ」
「先生に相談する?」
「何あの裸の画像?」と、心配した友達は矢継ぎ早にゆかりに質問する。
「大丈夫。心配しないで」
「心配しないでって言っても、だって、あんなことされたんだよ」
「犯人はもうわかってるから」
「誰?」