僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

「どうして知ってるの?」
「それは…」どう答えたらいいか分からず息が苦しい。
「大原さんから聞いたの?」
「いいや」
「それじゃ徳永さん?」
「…いいや」
「からかってるの?」
「ち、違うよ」
 悪いことを咎められているような気になってきた。やっぱり考えなく喋り出したからうまくいかない。当然こうなることはわかっていたのに…。
『どうしよう、なんて言おう。どうしよう?』
「それは…」
 自分が寝ている時に他人と繋がって見たり聞いたりできると説明しなければ牧園さんはこの話を信じてくれないだろう。でも、でも、こんな話を信じてくれるのか。小学校の嫌な記憶が蘇る。
「どうして知ってるのかというと…。それは…」
「…」牧園さんが自分の言葉を待っている。
「それは…」
『えぇい、こうなったらなるようにしかならない』そう腹をくくって、自分の能力を、人と繋がり見たり聞いたりできる力のことを牧園さんに話した。
 牧園さんは荒唐無稽なこの話を途中質問を挟むことなく聞いてくれた。そして、「あたし、嘘をつく人は嫌い」と言って歩き出した。
 豪介は焦った。このまま牧園さんに嘘つきだと思われるのは嫌だ。嘘つきじゃないことだけは信じて貰いたい。
「僕はうそつきじゃないんだ。銀治郎から、付き合ってって告白されたでしょ、あの時僕、銀治郎と繋がっていたんだ。だから知ってる。銀治郎が言い終わらないうちに牧園さん銀治郎を振って帰ったでしょ。〈全然興味ない。ごめんね〉って言って」
 牧園さんが立ち止まった。「なんで知ってるの?」
「だから、僕、人と繋がれるんだ」
「信じれるわけないじゃない」
「本当なんだ」
 豪介は、自分の話を信じてもらいたくて、ただ、牧園さんに信じてもらいたくて必死になって話を続けた。
「牧園さん前髪自分で切ったでしょ、こうやって、ハサミで、チョキチョキって。それで鏡を見ながらこう言ったんだ〈こりゃ、いけるかもしれない。うん、可愛い〉って」
「なんで?」
「牧園さんと繋がったこともあるから」
 牧園さんの顔が一気に真っ赤になっていく。
「変態!」と言われた瞬間に頬に衝撃が走った。
 バシッ!
 そして牧園さんは走って行ってしまった。
 豪介の頬がカッーと熱くなって、ジンジンしだした。頬に持った熱が牧園さんに拒絶された事実を物語っている。