【俺の家には大きな水槽に一匹だけ錦鯉が泳いでるよ。お祭りの時に金魚すくいして、その時とった金魚をこの鯉の水槽に入れたら日に日に金魚の数が減っていくんだ。鯉が金魚を食べちゃってたみたいで、その日から母親がこの鯉を気持ち悪がっちゃって、だから父親が餌をあげてる】
【文太くんの家、錦鯉飼ってるってすごいね。なんかお金持ちって感じ】
【一匹だけだよ。普通のサラリーマンの家だし】
【うちはね、犬飼ってるんだけどさ、毎朝お父さんが散歩に行ってて、でも毎朝ひきづられてるの。すごいんだよ、体重40キロのラブラドール。それで餌食べる直前だけきちんとおすわりして、お父さんが大声で「よしっ」ていうと食べ始めるんだ】
【かわいいの?】
【うぅん。可愛くないの。バカ犬】
【バカ犬かぁ】
【そう、バカ犬だよ】
【飼い主に似るって言うからなぁ】
【あっ、それ私のことバカだって言ってるでしょう?】
【言ってないよ、コムギが自分で言ったんじゃん】
【文太くんってひどいんだ】
【あれ、バカじゃないの?】
【私ちょっとは頭いいんだよ】
【へぇ、そうなんだ】
【文太くんは?】
【まぁまぁかな】
【大学はどこ行くの? もう決めたの?】
【まだ】
【近くだといいなぁ】
【そうだ、よかったらさぁ指に白い糸巻いて学校行かないか?】
【何それ?】
【離れていても繋がっている証拠だよ】
【うん。嬉しい】
6月25日 月曜日
期末テストを一週間後に控えた月曜日。
今日の4時間目は進路説明で、豪介たち2年生は講堂に集められた。1、2、3組が文系クラスでステージに向かって左側。4、5、6組が理系クラスでステージに向かって右側に各クラスごとに座っている。2年生のこの時期大学受験を身近に感じているものはほんの僅かで、半数以上の学生にとって大学受験はまだ先の話だと思っている。
進路指導の先生の面白くない説明が延々と続く。
「推薦を受けようと思っているものは3年生の1学期の成績が大変重要ですからね。推薦には2学期の成績は関係ありません。と言うことは今からの一年がとても大切になってきます。まずはそこを重々頭に叩き込んでください。そして一般入試で大学受験を考えているものは……」
と、何度も聞いたような耳にタコができるような気合い注入が延々と続いて行く。
【文太くんの家、錦鯉飼ってるってすごいね。なんかお金持ちって感じ】
【一匹だけだよ。普通のサラリーマンの家だし】
【うちはね、犬飼ってるんだけどさ、毎朝お父さんが散歩に行ってて、でも毎朝ひきづられてるの。すごいんだよ、体重40キロのラブラドール。それで餌食べる直前だけきちんとおすわりして、お父さんが大声で「よしっ」ていうと食べ始めるんだ】
【かわいいの?】
【うぅん。可愛くないの。バカ犬】
【バカ犬かぁ】
【そう、バカ犬だよ】
【飼い主に似るって言うからなぁ】
【あっ、それ私のことバカだって言ってるでしょう?】
【言ってないよ、コムギが自分で言ったんじゃん】
【文太くんってひどいんだ】
【あれ、バカじゃないの?】
【私ちょっとは頭いいんだよ】
【へぇ、そうなんだ】
【文太くんは?】
【まぁまぁかな】
【大学はどこ行くの? もう決めたの?】
【まだ】
【近くだといいなぁ】
【そうだ、よかったらさぁ指に白い糸巻いて学校行かないか?】
【何それ?】
【離れていても繋がっている証拠だよ】
【うん。嬉しい】
6月25日 月曜日
期末テストを一週間後に控えた月曜日。
今日の4時間目は進路説明で、豪介たち2年生は講堂に集められた。1、2、3組が文系クラスでステージに向かって左側。4、5、6組が理系クラスでステージに向かって右側に各クラスごとに座っている。2年生のこの時期大学受験を身近に感じているものはほんの僅かで、半数以上の学生にとって大学受験はまだ先の話だと思っている。
進路指導の先生の面白くない説明が延々と続く。
「推薦を受けようと思っているものは3年生の1学期の成績が大変重要ですからね。推薦には2学期の成績は関係ありません。と言うことは今からの一年がとても大切になってきます。まずはそこを重々頭に叩き込んでください。そして一般入試で大学受験を考えているものは……」
と、何度も聞いたような耳にタコができるような気合い注入が延々と続いて行く。

