遠くで野球部のノックの音がカキーンとここまで響いてきた。銀治郎が桜の樹に右腕を伸ばし、少し体重を預ける。ほんのちょっと視線が動いた。それでも牧園さんから視線は外さない。牧園さんも銀治郎を見ている。吸い込まれてしまいそうな瞳だ。視界の中に入り込む銀治郎のほっぺが微妙に動いた、もしかしたらニヤリといやらしい笑みを浮かべたのかもしれない。そしてその時が訪れた。
「可愛いね。付き合おうか」
『言いやがった!』
銀治郎が言い終わらないうちに牧園さんの口が動いた。
「全然興味ない。ごめんね」と言ってその場をさっていった。
『イヤァホッー、ホッホー、どうだ、参ったかバカが! 牧園さんはお前のようなゲスな男のことは最初っから見抜いてたんだよ! 何が、〈俺が付き合おうぜって言うだろ、その時の女子の顔って最高なんだよ。信じられない。って顔してよ。まるで世界が終わってもいいって顔するんだよ。あの顔を見るのが好きなんだよ〉だ。お前の今のアホヅラを見たかったぜ!』
銀治郎の視線が去っていく牧園さんを追っている。だが牧園さんは一度も振り向かない。まるで心残りがないように見える、というより本当に心残りがないのだろう。こんな爽快な楽しい結末になるとは思ってもみなかった。豪介は銀治郎の目と耳を共有しながら心が小躍りしていた。
『そうか、こんな結末になるんだったら、こいつのマヌケヅラを見るために牧園さんの意識に入っておくんだった。勿体無いことをした』
「あれ、どうしたの?」優斗の声が聞こえてきた。
「ダメだったの?」美咲もすぐ近くに来ている。
「チッ、あいつふざけやがって、デスってやる…」銀治郎の聞いていて気持ちのいいものじゃない言葉を聞いた。その言葉に含まれている悪意ある感情が豪介の胸を締め付けた。
目を覚ました豪介は銀治郎の最後の言葉が気になったが、まあ、何かするということではないだろう…、そう思うことにした。
「気分がスッキリしました。もう帰ります」
豪介は保健室を後にした。
【昨日はどうしたの?】
【毎日メッセージ送るのも悪いかと思って遠慮してたんだ】
【もう来ないかと思ってた】
【あっ、俺からのメッセージが来なくて寂しかったんだろう?】
【ばか】
【あれ、寂しくなかったの?】
【寂しくなんてないわよ】
【おっぱい疼かなかった?】
【変態!】
【俺は寂しかったなぁ】
「可愛いね。付き合おうか」
『言いやがった!』
銀治郎が言い終わらないうちに牧園さんの口が動いた。
「全然興味ない。ごめんね」と言ってその場をさっていった。
『イヤァホッー、ホッホー、どうだ、参ったかバカが! 牧園さんはお前のようなゲスな男のことは最初っから見抜いてたんだよ! 何が、〈俺が付き合おうぜって言うだろ、その時の女子の顔って最高なんだよ。信じられない。って顔してよ。まるで世界が終わってもいいって顔するんだよ。あの顔を見るのが好きなんだよ〉だ。お前の今のアホヅラを見たかったぜ!』
銀治郎の視線が去っていく牧園さんを追っている。だが牧園さんは一度も振り向かない。まるで心残りがないように見える、というより本当に心残りがないのだろう。こんな爽快な楽しい結末になるとは思ってもみなかった。豪介は銀治郎の目と耳を共有しながら心が小躍りしていた。
『そうか、こんな結末になるんだったら、こいつのマヌケヅラを見るために牧園さんの意識に入っておくんだった。勿体無いことをした』
「あれ、どうしたの?」優斗の声が聞こえてきた。
「ダメだったの?」美咲もすぐ近くに来ている。
「チッ、あいつふざけやがって、デスってやる…」銀治郎の聞いていて気持ちのいいものじゃない言葉を聞いた。その言葉に含まれている悪意ある感情が豪介の胸を締め付けた。
目を覚ました豪介は銀治郎の最後の言葉が気になったが、まあ、何かするということではないだろう…、そう思うことにした。
「気分がスッキリしました。もう帰ります」
豪介は保健室を後にした。
【昨日はどうしたの?】
【毎日メッセージ送るのも悪いかと思って遠慮してたんだ】
【もう来ないかと思ってた】
【あっ、俺からのメッセージが来なくて寂しかったんだろう?】
【ばか】
【あれ、寂しくなかったの?】
【寂しくなんてないわよ】
【おっぱい疼かなかった?】
【変態!】
【俺は寂しかったなぁ】

