僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 ゆかりは、唯が明るくなったのはこれかぁと嬉しくなった。ゆかりは好きな人のことを嬉しそうに語る唯が可愛かった。どんな人を好きになったんだろう、今度詳しく聞いてみよう。降りる駅がくると、「今度ゆっくり聞かせてね、絶対よ」と言って唯と別れた。

 花田豪介は家の中で悶々としていた。寝ないといけないことは分かっているのだが…。銀治郎が牧園さんに告白する。そのことが豪介の気持ちをかき乱し、心穏やかにならない。
『どうする、どうすればいい? どうやったら銀治郎の毒牙から牧園さんを守ることができる? 銀治郎の前に僕が告白するとか…。いやいやそれは無理だ。そもそも僕には告白する勇気がない。それに典子のこともある。典子とは僕がハイといえば付き合えるけど、牧園さんに告白しても認めたくないが最下層の僕では振られるのがオチだ。しかもそれがバレたら典子とも付き合えなくなってしまう。いやいやそもそも僕は典子と付き合うのか…。それはいいや、今は考えないでおこう。
 それじゃいっそのこと銀治郎の正体をバラすか、でもどうやって? 僕が突然現れて銀治郎はこんなやつです。付き合わないでくださいと言ったら僕はおかしな人だ。僕ができることはコンビニネコババ事件の犯人を見つけることぐらいだ。そして犯人を見つけたら、それを牧園さんに伝えて、その時、何かがどうかなって、どうにかしたら、牧園さんが僕を好きになって、銀治郎を振る』
 どこをどう想像しても、自分を好きになるという大きな壁を乗り越えられない。この壁を乗り越えるには、自分でも気付いていない魅力に牧園さんが気付いてくれるしかない。
『でも、自分でも気付いていない魅力ってなんだ? そんなものが僕にあるのか? それとも、それは典子に聞いたらわかることなのか? 典子は僕のどこを好きになったんだ?
 違う!』
 豪介は何を考えればいいのかわからなくなってきた。そこで考えを整理した。まず、自分が牧園さんと付き合うことは考えないほうがいい。その上で考えることは、銀治郎の毒牙からどうやって守るのかということだ。今はこれが一番大切だ。そう思って考え始めるのだが、またすぐ典子をことを考えてしまう。そんなことを数時間繰り返して、ついに一つの結論に達した。