【同じこと言ってる】
 【でも、なんかすごいね】
【もしかしたら二人だけかもね、あの流れ星見たの】
 【うん】
【どうする、世界で二人だけだったら?】
 【名前つけちゃう】
【なんて名前?】
 【うぅん…】
 【コムギ1号】
【そのまんま】
 【怒】
【ゴメン。あまりにもダサくて】
 【怒怒】
【でも、俺知らなかったよ、流れ星って速すぎて祈れないんだね】
 【本当。でも嬉しい。文太君と同じものを見てるってことがはっきりしたから】
【俺、流れ星生まれて初めて見た】
 【私も】
 【嬉しい】
【寝る前にまたメッセージ送るね】
 【うん】

6月15日 金曜日
 花田豪介が「おはよう」と言って教室を開けて入ると、教室の真ん中に蔵持銀治郎と辛島優斗、小林美咲の3人が集まっていた。毎日毎日いつも三人でくっついていてよく飽きないものだ。豪介はちょっと大回りに自分の席に向かう。こいつらからは周りの学生は存在してないのと一緒なのだろう、特に銀治郎は教室の隅の方にいる数人の同級生も豪介もゴミを見るような目で見ていた。
「ゴンスケに話聞こえるよ」
「ゴンスケだろ、いいよ無視しといて」
 豪介はその言葉を聞いてますます存在感を殺して下を向く。今更席を立てないし、このタイミングで変に顔を背けることもできない。カバンから教科書を出して眺めるふりをする。『どうしてこんなに気を使わなくてはいけないんだ…』と情けなくなる。
「で、どうすんだ、1年の子と付き合うのか」
「付き合うかよ、ブスじゃん」
 どうしても聞こえてきてしまう銀治郎たちの会話に、豪介は心の中で舌打ちをする。
『この間僕に断らせて、まだ他の子からも言われてるのかよ』
「あらら、銀治郎君ヒドイんだ」
「正直なだけだろ」
「2組の中村芽衣は?」
「あの子大学生と付き合ってるんじゃないの?」と優斗が美咲に確認する。
「あっ、そうなの、なんか昔銀治郎のこと好きって言ってたような気がしたんだけど」
「あっ、そうだっけ?」と優斗が銀治郎の代わりに聞く。
「そうよ。でも、ほら銀治郎がちょうど他の学校の子と付き合ってたのよねぇ」
「あぁ、そうか」とその時のことを優斗が思い出した。ただ、銀治郎は中村芽衣の名前を聞いても興味を示さなかった。そして、銀治郎は驚くべき名前を口にした。
「1組の牧園ゆかりだよ」
『えっ!』