大原純・・ワンルームのアパートに一人暮らしをしているようで、部屋の中は脱ぎ散らかした服やスナック菓子の袋があちこちに散らかっていて、テレビで見る学生の一人暮らしの典型といった感じだった。その部屋の中で大原はずっといろんな女の子とラインで会話していた。どうも大原はコンビニに来たあの可愛い子と付き合っているが、チャンスさえあれば二人目も三人目も行こうと狙っているようで、こまめにこまめに連絡を取っていた。豪介はある意味大原純のマメさに感心していた。自分はこれだけこまめにいろんな人に連絡はできない。それこそ大原は寝る間も惜しんで連絡を取っていた。そんな中で、一人の女性と連絡を取っていた時にもうすぐ誕生日だから何かプレゼントちょうだいと催促され、【リョ! 期待してて】と返信して。「やばい金どうしよう…」と呟いていた。
 有田律子・・マンションで一人暮らしをしていて、バイトの働き方同様の几帳面そのものの部屋で、質素で倹約家だった。キャベツをざく切りにしてボールに入れる。シーチキンの缶詰をオイルごとそのボウルに入れてマヨネーズであえておかずにしている。贅沢はしない代わりに、ラーメンですませるような手抜きもしない。しかも性格的に融通がきかず、あるべきものがそこにないと気持ち悪さを感じるらしく、直線と交差する直角で部屋のものが置かれていた。部屋というか性格に、余裕とか、隙がなく、窮屈さを感じる。暇な時間の過ごし方はネットで好きな洋服をチェックすることだが、ポチッと買い物をすることはなかった。
 豪介は三人の私生活を比べ誰がお金をネコババしても不思議ではない。皆お金が欲しそうだと結論づけた。

6月14日 木曜日
 この日は朝からどんよりとした雲に覆われた。2時間目にはポツリポツリと雨が降り出し、この雨をもって梅雨入りが宣言されると、雨は次第に強くなり時折雷も鳴った。
 弁当を食べ終わると豪介の元に久保田治が不思議な表情を浮かべながらやってきた。ニヤニヤにも見えるし深刻にも見える、感情がシーソーの上であっちに行ったりこっちにきたりしているそんな表情だ。久保田が豪介に耳打ちする。
「ゴンスケ、単刀直入に聞くぞ」
「なんだよ?」
「お前、典子のこと好きなのか?」
 予想もしなかった言葉に豪介はハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
「の、典子って、2組の末松典子か?」
「あぁ」