【今日学校帰りに声をかけられたものです。銀治郎君が写真を送って欲しいと言っているのでお願いします】と、メッセージを送った。
『くっそー、くっそー、くっそー、全然面白くない。あぁムシャクシャする。なんでこんなことになるんだ』
 ピンと着信音が鳴った。
 【嬉しい。写真です】
 胸のでかさを強調したような写真が送られてきた。それも何枚も何枚も。しかも全部胸が強調されていた。豪介は無性に腹が立ってきた。男を挑発するような谷間を見せて、でも、私はそんな女じゃないのよ、これは偶然そう映っただけという印象になるような角度の写真だ。銀治郎にはこんな女がホイホイ近寄ってきて、写真を送ってくれと言えばすぐにこんな写真が送られてくる。
『なんだよなんだよ! くっそー…。顔は? 中の上じゃないか。くっそー、くっそー、全然、全然、面白くねぇ』
 豪介はあまりにも面白くなくてせめて銀治郎よりも先に…。

 山形大悟は自分の部屋で返却されたテストを見ていた。点数は70点、平均点よりちょっとだけいい点数だった。これが自分の実力なのか。学内の通常の定期テストでは常に上位10名の中に入るというのに、中間テストは5位になったのに…。三島先生の言葉がよみがえる。
「これが今のお前たちの本当の実力なんだ。テスト前に慌てて詰め込んで勉強したものが身になっていないということがよくわかるだろう。日々の積み重ねこそが一番大切なんだ。分かったな!」
 まるで自分に向けられた言葉のような気がする。しかも井上唯は満点だったという。
〈私バカだから、頭のいい人に憧れるんだ〉
 大悟は壁にかけられた写真を見た。こんな点数では頭がいいとは言えない。
『もっともっと勉強して絶対頭が良くなってやるんだ…』

6月12日 火曜日
 朝、駅を降りた花田豪介は久保田治と一緒になり二人で学校に向かった。
「よっ」
「おっ」
 周りには同じような学生がひしめき、やはり同じように2、3人のグループになって学校に向かっている。部活のこととか、誰と誰が付き合い始めたとか、今日は雨が降りそうだとかそんな会話で盛り上がっていた。
「昨日、あのメモ銀治郎に渡したの?」
「あぁ、お前帰るんだもん」
「仕方ないよ、銀治郎だから。で、どうなったの?」
「どうもこうも、ほら」
「なにこの写真?」