「なぁゴンスケ、テストどうだった?」と久保田が話しかけてきた。
「普通」
「普通かぁ」
「お前は?」
「普通」
「普通かぁ」
 二人は同じようなテスト結果にお互い安心して笑いあった。国道に出たところで、近くの別の高校だろう夏服の制服を着た三人がこちらをみていることに気が付いた。豪介も久保田も自分たちには関係ないことだと思いながらも笑うのをやめ、緊張した足取りで息を潜めて彼女たちの前を通り過ぎる。通り過ぎた後久保田が豪介に聞いた。
「ゴンスケいまの三人だとどれが好み?」
「えっ?」
「俺は一番右の子だな。可愛かったぜ。真ん中の子は胸も大きかったなぁ。本当は俺胸の大きい子が好きなんだけどね」
 その時、「あの」と、声がかかった。
 豪介も久保田もびっくりした。まさか自分達に声がかかるとは思っていなかった。どうやらすれ違った後に自分たちを追ってきたようだ。豪介たちは周りを見て、やはり自分たちに声がかかったと知ると二人は同時に返事をした。
「はい」
「何年生ですか?」
「2年だけど」久保田の方が積極的に返事をする。
「2年だって」
「ほら言いなよ」
「でも」
「大丈夫だって」
「わかった」などとブツブツ言っていると、突然。
「蔵持銀治郎君って知ってますか?」と久保田が気に入っていたという一番右の子が聞いてきた。だが、蔵持銀治郎の名前を聞いて久保田は明らかに不機嫌になり、返事をしなくなった。
「君たちと同じ高校の2年生だけど、知ってるかな?」
 豪介が仕方なく返事をする。「同じクラスだけど」
 同じクラスだと聞いて明らかに三人のテンションが上がった。それは希望を見つけた、そんな顔だった。
「よかった。ほら、渡しなさいよ」
「うん。これ連絡先なんだけど、銀治郎君に渡してくれるかな」
「あっ、あぁ」と言って、豪介は差し出された紙切れを受け取った。
『しまった、受け取ってしまった』と思ったが、もう遅かった。
「よかった、絶対よ。なんか恋人募集って話を聞いたから、すぐに渡してね、それで絶対に連絡してって伝えてね」
 そう言って三人はキャーキャー言いながら消えていった。