「みんな聞いてくれ。私、蔵持銀治郎は彼女と別れました。ただいまフリーです。自薦他薦を問いません。可愛い子を彼女にしたいです」と宣言した。
 あちこちのグループで銀治郎がフリーになったことが話題になり、皆銀治郎に似合うのは誰だと面白おかしく話し始めた。銀治郎のもとに辛島優斗と小林美咲がやってくる。
「銀治郎、お前そんなに彼女欲しいのかよ」
「そりゃいるだろう。だってもうすぐ夏じゃん」
「ちょっとは一人の時間を楽しんだらいいじゃない」
「そうだよ」
「お前たちが言うなよ。俺はね美咲よりも可愛い彼女を作るの」
「あら、私のこと可愛いと思ってるの?」
「まあね、タイプじゃないけど」
「ひどい」と、楽しそうに話している。
 久保田治は銀治郎たちを大きく避けて豪介の元にやってくると銀治郎の方を向いて嫌な顔をした。実は久保田は銀治郎のことを嫌っていた。原因は、久保田の運動神経の悪さに起因している。みんなから「久保田」と声をかけられ振り向きざまに消しゴムやボールを投げられ、そしてそれをうまくキャッチできない姿を見て笑われていた。そうやって一番久保田をからかうのが銀治郎だったからだ。だから久保田は銀治郎をちらりと見て、「嫌なやつ」と呟いた。
 この銀治郎の恋人募集宣言は瞬く間に他の教室にも広まっていった。

 豪介は夕飯をそそくさと食べ、誰よりも早く風呂に入る。今日もコンビニネコババ事件の犯人を探そうとしていた。風呂から上がり自分の部屋に行こうとすると母親から、「あんた最近、早く寝すぎでしょう、ちょっとは勉強してるの?」と怒られた。
『夜更かしすればしたで、「早く寝なさい」というのに、全く親というのは勝手な生き物だ』そう思いながら「してるよ」と母親に答え階段をあがる。そしてそのままベッドに入った。宿題はあしたの朝か、もしくはやらない。どちらかだ。
 ここ数日は大原純と繋がっていたのだが、あれ以来バイトには入っおらず何も進展がなかった。だから今日は徳永伸也と繋がることにした。
『徳永伸也…、徳永伸也…、徳永伸也…』