「なんかさぁ化粧が派手になったと思うんだよねぇ。しかもさ胸が大きくなった気がするんだよなぁ」
 大悟は少し呆れたように「道治、お前よく見てるな」と言った。
「もしかして恋人ができたんじゃねぇかと思って」
「あの近藤先生が?」
「そう」
「あれは揉まれてるね」
「なんでわかるの?」
「揉まれてると大きくなるんだよ」
「そうなのか」
「あぁ」
「ちょっと。気持ち悪い」
「そうだよな。気持ち悪いよなぁ。気持ち悪いっていったらさ典子だよ。なんか最近色気出してきたのか気持ち悪いよな。大悟同じ中学だったんだよな」と道治が聞く。
 大悟は「ほらそこに写真があるだろう」と壁を指した。大悟がユニフォーム姿で写っている写真には三人三人の男女が仲良く写っている。
「そこの写真の一番ブスが典子」
「あれ? これ今よりもブスだね」
「うん中学の時はひどかったけど高校になってちょっとましになった」
「まぁ、それでもブスはブスかぁ。もしかしたら誰かのこと好きなんじゃねぇかなと思って。そんな感じがするんだよなぁ…。もしだよ、もし、典子から好きって言われたらどうする?」と道治が聞いた。
「それはない」
「じゃあ、やらしてあげるって言ってきたら?」
「もっとないでしょう」と大悟が笑いながら否定した。
「俺、しちゃうかもしれないなぁ。顔見なきゃいいじゃん」
「道治そんなに彼女が欲しいのか?」
「当たり前じゃん。やっぱ彼女だよ。大悟だって彼女欲しいだろ?」
「そりゃ、欲しいけど…。誰でもいいってわけでもないしさぁ」
「そりゃそうだけど」
「それじゃ、道治は典子でもいいの?」
「でも、まぁ、そうだな…、誰でもいいわけじゃないけど、やっぱり彼女は欲しいよなぁ」
「まぁ、そうだよなぁ」
「大悟は好きな人いるの?」
「…いや。道治は?」
「…うぅん、まだだな」
 二人とも彼女が欲しいことでは一致していた。
 道治は7時を回っていることに気がつき、「俺そろそろ帰るわ」と言って帰っていった。
 大悟は道治が帰ると自分たちが食べたラーメンを片付け、冷蔵庫からおかずの乗った皿を取り出してレンジで温めた。ジャーのご飯をよそい、カップラーメンだけでは満たされなかったお腹を母親の作り置きの夕飯で満たす。夕飯を食べ終えると食器を洗って布巾の上に置いておく。大悟は自分の部屋に戻ると、宿題を始めた。