僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 私、今女子校に通っているの。私のいる女子校は山のそばにあって、窓を開けると山の香りがしてとっても気持ちがいいの。ここは男子がいないから変な目を気にしなくていいからすごく楽。牧園さんから教えてもらった通り、自分から話しかけて友達もできたよ。牧園さん、心配しないで。私毎日楽しく過ごしてるから。本当は最後、牧園さんともう一度アイス食べに行きたかったけどそれは叶わなかったなぁ。
 あっ、それから道治君はいまも付き合ってるの。遠距離恋愛。今度道治君の小指を見て、白い糸が結んであるはずだから、もし結んでなかったら教えてね、その時は別れるって言ってあるから》
 僕は牧園さんが手紙を読んでいる間にずっと考えていた。久保田の心に典子がいるように、典子の心に久保田がいるように。唯ちゃんの心に道治がいるように、道治の心に唯ちゃんがいるように。自分の中に大切な存在がいるから、この世界で自分は孤独ではないと思えるのではないか。牧園さんの心に僕がいる。僕の心にも牧園さんがいる。だったら僕も、今なら言えるかもしれない。牧園さんの孤独には僕が寄り添います、と。
「ゴンスケ、唯ちゃん元気だった」
「うん、お互い大学生になったら一緒にアイス食べたらいいよね、友達っていいね」
「ありがとう、その時はゴンスケも誘ってあげるね」と牧園さんが優しい笑顔で言ってくれた。
 心臓が高鳴り、手に汗がにじむ。喉が乾き、見ている景色が蒸発しそうだ。
『今なんじゃないか、言うのは今なんじゃないか』
 だって、空はあんなに青いし、白い雲はあんなに輝いてるんだから。セミが鳴くのをやめ一瞬の静寂が訪れた。その時がきた! 木々が葉を揺らし、風が背中を押した。
「牧園さんの孤独には」
「ゴンスケ」
「ん?」
「唯からの手紙を見せた時、なんでびっくりしなかったの?」と言いながら牧園さんは唯ちゃんの手紙の2枚目を見ていた。
「お互い大学生になったら一緒にアイス食べに行こうね。ずっと、ずっと友達でいてね。…ゴンスケ」牧園さんの声が低くなった。急にピリピリとした空気が伝わってくる。
「あっ、ちょっとだよ、ちょっと、なんか昼寝してたら知らないうちに、自分でコントロールできないから…」
 牧園さんが「ゴンスケの変態!」というが早いか、頬に衝撃が走った。
 バシッ!
 牧園さんは怒って行ってしまった。
 セミがまた鳴きはじめた。