僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 山形大悟は月曜日から学校に来なかった。周りのクラスメイトは休んでいると思っていたようだが、大悟は退学していた。芽衣ちゃんは今回の期末テストでは処分を受けなかった。大悟が来なくなっても唯と結びつけて考えるものは誰もおらず、大悟に関する話題は終業式を持たずに誰もしなくなっていた。
 明日はいよいよ終業式で、これで夏休みになる。皆、条件反射のようにワクワクした気持ちを抑えられなかった。
 3組の教室では久保田に関する噂で持ちきりとなり、みんなが久保田に話しかけた。
「聞いたぜ久保田、典子の胸を触ったんだってな」
「どうだった? 柔らかかったのか?」
「つついたのか?」
「いや、違うよな。すげぇ鷲掴みにしたんだよな」
「ヒューヒュー!」
 授業の合間の休憩時間、豪介は久保田を慰めてやろうとした。
「久保田、気にするな」
「あぁ」
「どうせ、銀治郎が適当なこと言い触らしてるんだ」
「…」
「あいつ、ふざけやがって」
「…」
「どうした?」豪介が久保田の顔を見る。久保田は申し訳ないような顔をしている。
『こいつ触りやがった!』
 久保田が女子の胸を触ったという羨ましすぎるほどの衝撃が雷鳴のごとく襲いかかる!
 豪介は思い出した。〈久保田君、今度触っていいよ。久保田君なら、いいよ〉と典子が言っていたことを。
「俺だって触っちゃいけないと思ってずっと我慢してたんだ」
「そうだよな、我慢してたよな。触っていいよって言われても我慢してたもんな」
「えっ?」
「いや、なんでもない。なのにどうして触ったんだよ?」
「典子がブスに見え始めたんだ」
「ブスに見え始めたって、分かってただろう」
「あぁ、分かってた。だけどな、可愛いと一時は思ったんだ。でも、やっぱりブスなんだよ。なんだか俺冷めてきちゃって」
「わかるよ、お前の気持ちはよくわかる。それで?」
「それで、一昨日のことだよ、俺やっぱり別れようと思って…」
「言ったのか?」
「言おうとしたんだ、そしたら、そしたら触っていいよって言うんだ。あの胸を突き出して、あいつ、目を閉じるんだ。それでも俺我慢したんだよ。そしたら、あいつ俺の手を取って、〈ほら、ドキドキしてるでしょ〉って〈ねぇ、感じる?〉って。俺は、俺は、その時、我慢できなくて、手を、動かして、モミモミしちまったんだよぉ」
「んあぁ!」
「典子が美しく見えたよ」
「んんあぁあ!」