僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

「初めまして、唯です」
「初めまして、道治です」
「どうして?」
「僕は、僕は…」
「今日日曜日よ、どうして制服なの?」
「あっ、これは、唯ちゃんに見つけてもらおうと思って」
「雨も降ってるのに」
「傘さしたら、わからないと思って」
「ねぇ、どうして文太って名前にしたの?」
「あれは、飼っている錦鯉の名前なんだ」
「そっか」
「コムギは?」
「うちで飼っているバカ犬の名前」
 二人は同じように名前をつけていたことを笑った。
「同じだね」
「うん、同じだった」
 道治は言わなければと思っていたことを口にする。
「唯ちゃん、ごめんね…」と言おうとした道治の口を唯の指が遮る。唯はその手をそのまま道治に向けて差し出した。
「謝らなくていいから、友達になってくれる?」
「うん」
 道治がその手を優しく、とる。

 その同じ日曜日の夕方4時、雨の上がった丸池公園のベンチに男が座って待っていると、そこに原付が乗り入れてきた。ヘルメットをとって「悪い悪い」と言いながら近づいて来る。待っていた男は立ち上がると、「君が純君だね」と言って胸ぐらを掴むとグイッと持ち上げた。大原純は大柄で力の強い男から胸ぐらを掴まれ爪先立ちになる。
「な、なんだよおっさん」
「君、高校生相手に強請りをしてるだろ」
「…してねぇよ」
「警察沙汰にされたくなかったらもうやめるんだな」
「ちょっと待てよ、悪いのはあいつなんだぜ、テスト用紙をもらってんだ」
 それを聞いて、その男は力を緩めた。
「あんた誰だよ、父親か?」
「…学校の先生だ」
「あいつの高校のか?」
「あぁ」
「だったらちょうどいいよ、あいつ誰かからテスト用紙を横流ししてもらってんだ」
「それは問題だな」
「そうだろ」
「わかった。それは学校で対処しよう」
「そうだよ。それがいいよ」
「君も強請りはもうやめることだ」
「いいんだよ、あいつが悪いことしてたのをちょっと懲らしめたかっただけだからさ」
「あぁ、そうか」
「もう、行ってもいいかな」
「あぁ、いいよ」そう言われると大原純はそのまま去って行った。

7月19日 木曜日