「ほら」と言って池の中の小さな島を見ると、見覚えのある後ろ姿の男性が立ち上がり去って行った。
「三島先生。大悟のお父さん」
「どうして?」
「呼び出しといたんだ。話を聞いてもらったほうがいいと思って」
豪介は自分だけが知っている秘密で三島先生にメッセージを送っていた。
『…絶対に丸池公園に来てくださいね。【近藤先生と結婚するんだってね、てへぺろ】』
鈴木道治は朝から唯の入院している病院を訪れると、中庭から病室の窓を見ていた。と言っても、唯の入院している部屋はどこかわからない。とにかくそこにいるだろうと思いながら病室の窓をずっと見ていた。昼過ぎに雨が落ち始めたが、それでも道治は病室の窓を見続けた。
井上唯はベッドにもたれ本を読み、時折窓の外の雨を見ていたが、室内に入ってきそうな雨足に窓を閉めようと立ち上がった。窓に手をかけると、その視界の中に見慣れたスクールシャツ姿の男子を見つけた。
ドキリと心臓が跳ね、とっさに窓から離れた。
雨の中に佇む男子はここからでは誰かわからなかった。
先日牧園さんがお見舞いに来てくれた時、机にメッセージを入れたのは文太じゃないかもしれないと言っていた。もしかしたらと思ってあの日以来オフにしていた携帯の電源を入れてみる。溜まっていた文太からのメッセージを次々に受信する。最後のメッセージに初めて目にする名前があった。
【コムギへ
僕は鈴木道治と言います。同じ高校の2組にいます。
僕が文太です。
僕の友達がひどいことをしました。文太とコムギのメッセージを机に入れたのです。そのことで唯ちゃんがものすごく苦しんだことを知りました。唯ちゃんを一人で苦しませてごめんなさい。一人にしてしまってごめんなさい。僕だけずっと名乗らなくてごめんなさい。僕は弱い男です。本当に弱い男です。本当に、本当にごめんなさい。
日曜日、病院に行きます】
唯はパジャマのまま病室を飛び出し、玄関から外に出た。落ちてくる雨も気にならない。濡れるに任せ、唯は建物を廻って中庭をめざす。知らず知らずに足早になり運動していなかった体がびっくりして心臓がばくばくする。
唯が中庭に出ると、道治も唯に気がついた。
二人が近寄る。
唯がかすかにほほ笑んだ。その微笑みを見て緊張していた道治も泣きながらほほ笑んだ。
「初めまして、コムギです」
「初めまして、文太です」
「三島先生。大悟のお父さん」
「どうして?」
「呼び出しといたんだ。話を聞いてもらったほうがいいと思って」
豪介は自分だけが知っている秘密で三島先生にメッセージを送っていた。
『…絶対に丸池公園に来てくださいね。【近藤先生と結婚するんだってね、てへぺろ】』
鈴木道治は朝から唯の入院している病院を訪れると、中庭から病室の窓を見ていた。と言っても、唯の入院している部屋はどこかわからない。とにかくそこにいるだろうと思いながら病室の窓をずっと見ていた。昼過ぎに雨が落ち始めたが、それでも道治は病室の窓を見続けた。
井上唯はベッドにもたれ本を読み、時折窓の外の雨を見ていたが、室内に入ってきそうな雨足に窓を閉めようと立ち上がった。窓に手をかけると、その視界の中に見慣れたスクールシャツ姿の男子を見つけた。
ドキリと心臓が跳ね、とっさに窓から離れた。
雨の中に佇む男子はここからでは誰かわからなかった。
先日牧園さんがお見舞いに来てくれた時、机にメッセージを入れたのは文太じゃないかもしれないと言っていた。もしかしたらと思ってあの日以来オフにしていた携帯の電源を入れてみる。溜まっていた文太からのメッセージを次々に受信する。最後のメッセージに初めて目にする名前があった。
【コムギへ
僕は鈴木道治と言います。同じ高校の2組にいます。
僕が文太です。
僕の友達がひどいことをしました。文太とコムギのメッセージを机に入れたのです。そのことで唯ちゃんがものすごく苦しんだことを知りました。唯ちゃんを一人で苦しませてごめんなさい。一人にしてしまってごめんなさい。僕だけずっと名乗らなくてごめんなさい。僕は弱い男です。本当に弱い男です。本当に、本当にごめんなさい。
日曜日、病院に行きます】
唯はパジャマのまま病室を飛び出し、玄関から外に出た。落ちてくる雨も気にならない。濡れるに任せ、唯は建物を廻って中庭をめざす。知らず知らずに足早になり運動していなかった体がびっくりして心臓がばくばくする。
唯が中庭に出ると、道治も唯に気がついた。
二人が近寄る。
唯がかすかにほほ笑んだ。その微笑みを見て緊張していた道治も泣きながらほほ笑んだ。
「初めまして、コムギです」
「初めまして、文太です」

