それを聞いて大悟の表情が変わった。聞くのを怖がるような顔になったが、豪介は躊躇なくその名前を口にした。
「銀治郎だってよ」
大悟の心に「銀治郎」の名前が入っていく。芽衣ちゃんの新しい彼氏が銀治郎。その言葉が深く深く浸透していく。芽衣ちゃんの心の中に自分がいると思っていたのに、存在のかけらすらなかった。心の中の感情のつっかえ棒が外れ、こらえきれなくなった絶望が激流のように押し寄せる。
豪介が大悟を見るとその目が座っていた。
『この目はどこかで見たことがある。そうだ、徳永だ、徳永が大原純を突き飛ばした時の思いつめた目に似ている』あのイった目と同じ目をしていた。
『こいつ、何かやる』
と、思った瞬間に「わぁぁぁぁ!」と、大きな叫び声をあげて大悟が突進してきた。自分たちを池に落とそうとしている。
『僕に守れるのか? 多分大丈夫。いや絶対に守る!』
そして飛び出した。つもりだったが、小さな段差につまづいて転んでしまった。勢い良くやってきた大悟は転んだ豪介に引っかかりバランスを崩す。その大悟を牧園さんはスッと避けると、大悟は広場と池を隔てるロープを越えてもんどりうって池に落ちた。
バシャーンと大きな音が聞こえた。
「ゴンスケ、大丈夫?」牧園さんが心配してくれた。豪介は顔から火が出るほど恥ずかしかったがすぐに立ち上がって、「あぁ」と言った。結果的には守ることが出来た。と、思うことにした。
豪介とゆかりは池に落ちた大悟を見た。大悟は池の中で立ち上がると、ようやく観念したのか胸まで水に浸かりながらその場でオイオイ泣き始めた。豪介は泣き続ける大悟に手を伸ばして池の中から助け出す。大悟は抵抗もせず、されるがままに助け出された。池から上がった大悟は全身水浸しで泥だらけでどうしていいのかわからないのだろう、迷子の子どもにように突っ立ってただ泣いていた。かすかに「ごめんなさい…」と言っている。
牧園さんが「もう、行って」と言うと、大悟が小さな声で「…行っていいですか?」とつぶやき、大悟はトボトボと自転車を押しながら帰って行った。大悟の濡れた服から滴り落ちる水が黒く跡をつけていた。
豪介は胸ポケットから携帯電話を取り出すと、まだ通話中になっていることを確認して、「それじゃ僕たち帰ります」と言って通話を切った。
「ゴンスケ、誰?」
「銀治郎だってよ」
大悟の心に「銀治郎」の名前が入っていく。芽衣ちゃんの新しい彼氏が銀治郎。その言葉が深く深く浸透していく。芽衣ちゃんの心の中に自分がいると思っていたのに、存在のかけらすらなかった。心の中の感情のつっかえ棒が外れ、こらえきれなくなった絶望が激流のように押し寄せる。
豪介が大悟を見るとその目が座っていた。
『この目はどこかで見たことがある。そうだ、徳永だ、徳永が大原純を突き飛ばした時の思いつめた目に似ている』あのイった目と同じ目をしていた。
『こいつ、何かやる』
と、思った瞬間に「わぁぁぁぁ!」と、大きな叫び声をあげて大悟が突進してきた。自分たちを池に落とそうとしている。
『僕に守れるのか? 多分大丈夫。いや絶対に守る!』
そして飛び出した。つもりだったが、小さな段差につまづいて転んでしまった。勢い良くやってきた大悟は転んだ豪介に引っかかりバランスを崩す。その大悟を牧園さんはスッと避けると、大悟は広場と池を隔てるロープを越えてもんどりうって池に落ちた。
バシャーンと大きな音が聞こえた。
「ゴンスケ、大丈夫?」牧園さんが心配してくれた。豪介は顔から火が出るほど恥ずかしかったがすぐに立ち上がって、「あぁ」と言った。結果的には守ることが出来た。と、思うことにした。
豪介とゆかりは池に落ちた大悟を見た。大悟は池の中で立ち上がると、ようやく観念したのか胸まで水に浸かりながらその場でオイオイ泣き始めた。豪介は泣き続ける大悟に手を伸ばして池の中から助け出す。大悟は抵抗もせず、されるがままに助け出された。池から上がった大悟は全身水浸しで泥だらけでどうしていいのかわからないのだろう、迷子の子どもにように突っ立ってただ泣いていた。かすかに「ごめんなさい…」と言っている。
牧園さんが「もう、行って」と言うと、大悟が小さな声で「…行っていいですか?」とつぶやき、大悟はトボトボと自転車を押しながら帰って行った。大悟の濡れた服から滴り落ちる水が黒く跡をつけていた。
豪介は胸ポケットから携帯電話を取り出すと、まだ通話中になっていることを確認して、「それじゃ僕たち帰ります」と言って通話を切った。
「ゴンスケ、誰?」

