僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 大悟はこの【いいよ】のメッセージを見るたびにニヤニヤしてしまう。友達になった。やっとやっと友達になった。中学の時からずっとずっと願っていたことがやっと一歩だけかなった。
 高校1年生の時に芽衣ちゃんが赤点を取ったという噂を聞いて、力になれるかもしれないと、勇気を振り絞って自分から話しかけた時のことを思い出した。
 〈芽衣ちゃん、英語大変なんだろ〉
 〈なんで?〉
 〈これで勉強したらきっといい点数が取れるから〉
 〈すごい、嬉しい〉
 あの時芽衣ちゃんはものすごく可愛い顔で自分を見てくれた。あの時はすぐにでも友達になれると思ったけど、それ以上の仲になることはなかった。でも、それがようやく、こうして今、友達になることができた。やっと、やっと友達になれた。
『芽衣ちゃんと友達だ』
 自分も友達だと思っているし、芽衣ちゃんも自分を友達だと思っている。芽衣ちゃんの心の中に自分がいる。もしかしたら、いつか、恋人になれるかもしれない。
 友達になったからには友達のメッセージのやり取りをしなくては。一体どんなやり取りをしたらいいのだろう。そうだ、まずは趣味を聞いてみよう。いきなり聞くよりかは自分の趣味を話してから聞いた方がより自然だろう。
【僕は漫画が好きでよく読んでます。芽衣ちゃんは漫画読む?】
【ゲームもちょくちょくします。格闘ゲームなんかをよくやります。芽衣ちゃんは?】
【スポーツはあまりやりません。ついでに言うと見ることもあまりないです。ほら、あの中学の時にみんなで見に行った野球が最後だったかな。芽衣ちゃんは?】
 【芽衣、メッセージ送るのにがて】
【大丈夫だよ。すぐに慣れるよ。それまでは僕のほうがちょくちょく送るね。気が向いたら返事くれたらいいから。短くてもいいよ】
【もし漫画読むんだったら今度貸してあげるよ。それから勉強わからないところがあったら教えてあげる。図書館で勉強してもいいしね。なんか楽しみだよね】
 芽衣ちゃんからの返事のメッセージはまだきていないが、今までは送りたくても送れなかったことを堂々と送ることができる。
『なんて言ったって僕たちは友達なんだから…』
 嬉しさがこみ上げてくる。
 その携帯が不意に着信を知らせた。大悟はドキリとした。もしかしたら芽衣ちゃんかもしれない。だがそれは期待していた芽衣ちゃんではなかった。嫌な電話番号だった。
「はい」