僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 豪介は牧園さんの明るさの秘密や、正義感の強さや、何かわからないけど、心の強さと弱さの秘密を知った気がした。

 夜、豪介は2組の男子に調査を広げ2、3人と繋がり目を覚ますと、見た情景をノートにまとめていった。そしてまた調査のために寝る。だが、なかなか男子の中に唯の痕跡を見つけられない。この日六人目、鈴木道治の意識に入った。
 道治の部屋は畳の六畳間で、どこにでもある普通の部屋だった。机とベッドと洋服ダンス、本棚には漫画の本とゲームのフィギアが並んでいる。部屋の中は高校3年生の割にはきちんと整理されていて観葉植物が飾られている。これらのものが本人の動いた視線の先にチラチラ見えた。
 そして道治が携帯を取り出した時。
『見つけた!』

7月12日 木曜日
 花田豪介は朝一番で牧園ゆかりに昨日の報告をした。
「ついに文太を突き止めた」
 牧園さんの表情がこわばる。
「誰?」
「鈴木道治。2組の鈴木道治だったんだ。あいつが文太で唯ちゃんにメッセージ送っていた。間違いないよ」
「誰?」
 どうも牧園さんは道治と聞いてもピンと来てないようだった。
「ほら、2組のそこそこ頭のいいやつで僕と同じぐらいの身長であまりパッとしないやつ」
 そう言われ、ゆかりもようやく見当がついた。
「あの男子が」
「うん」
 今、ここに道治がいたらあのビンタを食らわせるんだろうなぁ…。と豪介が思うほど、ゆかりの表情は硬く、ピリピリした意志を感じた。

 この日、学校では先日の期末テストの結果が出た。
 鈴木道治は自分の結果よりも井上唯のことが気にかかっていた。あれから道治がどんなメッセージを送っても唯から返事が返ってこない。
『テストを白紙で出したと言うのは本当だろうか…』
 道治はテストの結果を持って山形大悟のところに行く。
「大悟どうだった?」
「見る?」
 そう言って差し出した大悟の成績は1位だった。
「おっ、すげえ、ついにやったなぁ」
 言葉とは裏腹に道治の心は締め付けられる。
『と言うことは、唯ちゃんは本当に白紙で出したのかもしれない…』
 大悟が嬉しそうに話しかけてくるが道治は上の空になっていた。その時、豪介とゆかりがやってきた。
「道治君、ちょっといいか?」

 豪介と牧園ゆかりは道治を人気のない自転車置き場に連れて行った。
 牧園さんが睨むように道治を見る。