僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 ゆかりは唯のことをずっと考えていた。クラスのみんなは暗いとか言うけど、ゆかりは本当の唯を知っていた。話をするととっても明るくて、勉強は人一倍よくできて、でもそのことをひけらかす事は全然なくて、努力家で、誰の悪口も言わない。何も悪くないのに傷ついて、今は病院で一人寝ている。唯の孤独を考えると、心が痛い。それは唯の孤独ではなく、自分の孤独を見ているような気になるからかもしれない。ベッドに寝ている唯を見た時から自分の心がどこかに飛んでいきそうな感覚に襲われていた。辛かった日の、心がカラカラに乾いていた時のことを思い出し、気持ちが孤独に飲み込まれていく。気分がどんどんどんどん引っ張られ、思い出したくなくても思い出してしまう。心が苦しい…。
『…話したら楽になるかもしれない。誰かに話したら、今まで話せなかったけど、誰かに聞いてもらいたい』
「ねぇ、ゴンスケ、ちょっとだけ、ちょっとだけ付き合ってくれる?」と言って、ゆかりは道を曲がって進んで行き、小さな公園の木陰にたたずむ木のベンチに腰掛けた。
 豪介はこれからの調査に関してどうしたらいいのかの相談だと思っていた。
「ゴンスケ」
「何?」
「唯ちゃんベッドに一人で寝てたの。白い布団がふわりと掛けられてて、まるで取り残されてるみたいに一人だけで、私唯ちゃんの手を握ってそばにいたんだけど、私の存在なんてそこにないみたいに一人ぼっちだったの…」
「うん…」
「今まで誰にも話せなかったことなんだけど、聞いてくれる?」
「どうしたの?」
「ゴンスケ自分の秘密を私に話してくれたでしょう。だから私の秘密も聞いて」
「うん」
「誰にも言わないでね」
「うん」
『牧園さんは何を話すのだろう…。好きな人がいて、その悩みだろうか。もしそうなら、僕は傷つくだろう。だけど、だけど、それでも牧園さんの力になってあげたい。僕なら牧園さんの好きな男の素性を探ってあげられる』
「唯ちゃんを見ている時、私、自分を見ているみたいだったの…」
『一体、なんの話だろう』豪介は自分が聞いてはいけない話なのではないかと思った。
「私ね、本当は両親いないの」
「…」