僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 その瞬間心臓がドキンと跳ねた。
 典子の心臓もドキンと跳ねた。
 久保田は横断歩道を渡り終えても手を繋ぐんだという意思を伝えるために、ちょっと手に力を入れた。典子もその手の意思を感じとった。久保田の手が汗ばみ、典子の手も汗ばむ、お互いのじっとりとした手が遠慮しながら柔らかくにぎり合う。
 典子は気恥ずかしさに饒舌になった。喋っていないと手を握り合っているのを意識してしまいそうで、そのことに気がつかなったと思うほど話に夢中にならなくてはと思い一生懸命噂話を披露した。
「3組に銀治郎君っているでしょう」
「うん」
「誰かに振られたらしいの、知ってる?」
「へぇ」
「銀治郎君を振るような女子もいるのね」
「の、典子も、もし銀治郎から言われたら、その、銀治郎の方が」
「私は久保田君がいい」
「そ、そう」
「うん」
久保田がちょっと手を強く掴み、典子もちょっと力を入れた。
 典子は手の力に久保田の愛を感じて嬉しくなった。
「そういえば芽衣ちゃん彼氏と別れたって話したでしょう」
「あっうん、聞いたね」
「別れた原因はね浮気なんだよ」
「へぇ」
「あんなに可愛い子と付き合っても男って浮気するんだね」
「お、俺はしないよ」そう言ってまた久保田は握った手に力を入れた。
 二人は初めて味わう愛の中に漂っていた。

 久保田と典子が楽しく帰っている頃、花田豪介は放課後の図書室で牧園ゆかりに、この二日間で1組の男子十三人と繋がって調べた結果のノートを見せていた。
「とにかく二日間駆け足で1組の男子と繋がってあいつらの部屋を見た結果なんだ」
 相 健吾・・彼女とずっとライン。彼女は他校の生徒。唯についての痕跡なし
 岡本 啓・・・昔のロックの映像を見ている。部屋の中はクイーンのポスターが張られていて女っ気なし。唯についての痕跡なし。
 加藤 亮太・・勉強をしている。息抜きは漫画。唯についての痕跡なし。
 斉藤 真太郎・・一人でパソコンを使い絵を描いていた。唯についての痕跡なし。
 波多江 貴士・・いやらしい動画ばかりを見ていた。唯についての痕跡なし 
 羽田 満・・・部屋の中で筋トレばっかり。唯についての痕跡なし。
 藤井 芳広・・姉の子供の面倒を見て一緒に遊んでいた。唯についての痕跡なし。
……
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