僕は犬のウンコだけど、特殊能力を持っている

 優斗が「もういいだろ、こいつも謝ったんだから」と言い、美咲も「牧園さんごめんね、あの画像作ったのは銀治郎だけど、唯ちゃんのメッセージのことは別人じゃないかな」と言った。さらに銀治郎は「まぁ、そういうことだよ。それとゴンスケ、お前どうやって俺たちの話聞いてたんだ?」と言ってきた。
「えっ?」まさか、そこを聞かれるとは思ってなかった。
 銀治郎が椅子から立ち上がり、豪介に一歩近づいた。豪介はその圧力に押され後ずさりしてしまう。
「どうして知ってるんだ?」
 豪介はとっさに目線をそらして、「それは…」と、口ごもってしまった。
「お前も変態じゃねぇか。盗み聞きしやがって」と言われた瞬間、
 ゴツリ!
 豪介は物凄い衝撃を受けて吹っ飛んだ。
 ガラガラガラ…。
 気がつくと周りの机をなぎ倒して床に転がっていた。左頬が熱い。
「何するのよ!」
 牧園ゆかりが豪介と銀治郎の間に立つ。優斗が銀治郎をゆるく止める。
「銀治郎、やめとけよ」
 銀治郎は豪介を見下しながら、「変態野郎が」と罵って椅子に座った。
「行くよ、ゴンスケ」
 ゆかりは豪介を助け起こしてその場を離れた。

 ゆかりは豪介をプール横の大きな桜の木の木陰に座らせ、自分のハンカチを水に浸して持ってきた。銀治郎に殴られ赤くなり始めた豪介の頬にそっとそれを当てがう。
 熱を持った頬に冷たいハンカチが気持ちいい。
 一息ついたところでゆかりが口を開いた。
「ゴンスケごめんね、私のために。大丈夫?」
「うん、牧園さんで慣れてるから平気」
 なんとなく言った言葉だったが、二人で笑いあい、豪介は牧園さんとの距離がちょっと縮まった気がした。
「唯のメッセージは違ってたね」
「うん」
「誰がやったんだろう。また調べてくれる?」
「うん。ごめんなさい」
「どうして謝るのよ」
「僕の早とちりだった」
「そんなことないわよ。銀治郎の性格の悪さだったらそうだと思うもん。私だってそう思ったし」
「うん」
「それに、私のを作ったことに間違いはないんだから」
「うん」
「だけど、なんで知ってるのか聞かれても絶対に答えちゃダメよ」
「はい」牧園さんのいう通りだ、さっきは危なかった。殴られたからよかったものの、正直あれ以上問い詰められていたら自分はなんと答えていたのかわからなかった。