それからはあっという間に進んでいった。
 葬式は気づかないうちに終わっていた。
 参列者は知らない人ばかりだった。きっと凛の知り合いだろう。喪主は必然とひまりが請け負ったが、まるで普段の仕事のように事をこなし、普通の人なら憔悴して手間取る作業も手早く済ませた。
 その結果、参列した人のほぼ全員から、「旦那と娘が死んでも一切悲しまない、薄情な女」と呼ばれた。
 本当に何も思わなかった。
 凛と美桜が二人で少し遠くに出かけているような感覚で、数日後にはふらっと帰ってくる、そういった根拠のない確信があった。だから平然としてられた。
 そうして葬儀は終わった。
 ひまりは薄情な人間とラベリングされたが、そんなことは別に気にならない。誰から何と言われようと、どうだっていい。慣れたことだ。
 そうして凛と美桜の死を悼む日は終わった。
 凛と美桜のいない日常が訪れた。だというのにやはり、ひまりは何も感じなかった。いつも通りという言葉が最も似合う。
 しかし、死後の手続きなどの影響で、一旦保育園は休職させてもらうことにした。
 手続きというものは想像以上に面倒で、よく分からない書類に適当に幾つもハンコを押して、さらに別の業者から似たような話を聞く、といったことを繰り返す。仕事をする暇もないほど手続きが多いため、母親にも手伝ってもらった。
 保険だとか、相続だとか、裁判だとか、正直知らない。そんなものはどうだっていい。
 しかしハンコを押さなければ、終わらないと言う。だから仕方なくハンコを押すと、業者は満足げな表情で家を出ていく。
 彼らは遺族に寄りそう気なんてさらさら無く、ただ業務ノルマを達成したいだけなのだろう。でなければ、こんな強引に話を進めたりしない。
 諸々の手続きが終わった頃には、一か月が経過していた。
 寂しくはあるけれど、未だ凛と美桜がいなくなったことを信じられない。明日の朝にでも、「ただいま」と元気よく帰ってきそうな雰囲気があった。