オナラはなんでも知っている

 一方の啓は目の前から遠ざかっていくゆかりの後ろ姿を見ながら大きなショックを受けていた。思い切って自分の秘密を話したのに、それを聞いたゆかりはあからさまな拒絶の表情を浮かべ何も言わずに帰ってしまった。ゆかりならと思って話したことなのに、世の中でこの人なら僕のことを信じて友達になってくれると思ったのに・・・。啓の心は絶望で暗くなっていく。このまま信じてもらえないなんて、こんなのはダメだ、こんなのは絶対にダメだ。信じてもらえないなんて許されることじゃない!

 ゆかりは啓から逃げ出すように走り出すと一目散に家まで帰ってきた。同じクラスの啓があんな危ないやつだとは思わなかった。クラスにいる時の啓は大人しい、静かなやつで、危ない片鱗もなくて、思わず助けたこともあったが、二度と近づくのはやめようと思った。家の玄関を開けようとして、不意に声をかけられた。
「ゆかりさん」
 ゆかりが振り向くとそこに啓が立っていた。
「きゃ!」思わずゆかりは叫んでいた。「どうして?」
「後を追いかけた」
「ついてきたの?」
「うん」
 ゆかりは後悔した。こいつは本当にやばいやつだ。関わりを持ったのは失敗だった。しかも家まで知られてしまった。家に入った方がいいのか、このまま刺激しないように話を聞いて帰ってもらった方がいいのか・・・、どうしたらいい、どうするのが正解だろう・・・。
「本当なんだよ、信じてよ。もう、人から信じてもらえないのは嫌だよ」
 ギラギラした目で啓が何か言っている。ゆかりは啓を刺激しないようにとりあえず話を聞いているフリをすることにした。
「そう、ごめんね、ちょっとびっくりしちゃったから」
「君だって何か力があるんだろう。何かこう、すごい力が・・・」
『しまった、やっぱりこいつを助けたのは失敗だった』ゆかりはいま力を使えばますますこいつが自分に付き纏うだろうと思うと、力を使って追い払うこともできない。
 一方の啓はとにかくゆかりに自分のこの力を信じてもらいたかった。いまゆかりに信じてもらわなければきっとこの先自分の力を信じてくれる人は現れない。ゆかりなら、何かすごい力を持っているゆかりなら・・・。簡単に諦めるわけにはいかない、全身全霊で訴えなければ、信じてくれる人はこの人しかいない。必死に、それこそ必死に訴えた。