徳乃真は悪霊から名指しされたと思ったのか、小さく震え歯がガチガチと鳴った
『あの噂は本当だった。こいつは悪霊と友達だ。もしかしたらこいつ自身が人間に紛れ込んだ悪霊かもしれない。世の中に霊とか悪霊とかそんなものはないと思っていたけど、こいつだ、こいつは本物だ』
「わかった、わかった。言う、言うよ」
徳乃真の怯えた目を見てゆかりは壁の文字を消した。そして、改めて「どうしてあんなことしたの?」と聞いた。
「忠彦がメアリーの椅子の匂いを嗅いだからだよ」
「それだけじゃないでしょう」
「・・・」
「あの時徳乃真君は、メアリーの椅子の匂いを嗅いだからだ。それになって、何か言おうとしたでしょう。何を言おうとしたの?」
「・・・忠彦の手紙のせいでオレはメアリーと別れたんだ」
「手紙ってなによ?」
「もういいだろう」そう言うと、徳乃真は目に恐怖を湛えたまま家の中に走りこんでしまった。
『忠彦の手紙って、なんだろう・・・』とにかく徳乃真があそこまで怒ったのは忠彦がメアリーの椅子の匂いを嗅いだだけではなくて、メアリーにフラれた原因が忠彦の手紙にあったからだということがわかった。忠彦の手紙・・・。それには一体何が書いてあったのか?
徳乃真からはこれ以上話を聞けないだろう。となると、ゆかりはもう一人の当事者であるメアリーに話を聞くしかないと思った。
ゆかりが家に帰ってくると、自分が帰ってくるのを待っていたかのように家の電話が鳴った。家の電話がなるなんて珍しい、友達からは携帯にかかってくる。家にかかってくるのは家庭教師の派遣とか、塾とか、近所の歯医者の機械的なメッセージぐらいしかない。家の電話がなるとなんだか嫌な感じがする。しかも、亮平の姿が見えなかった。
「あっ、もしもし、こちらは・・・」
電話を切るとゆかりは慌てて家を飛び出た。自転車に飛び乗り立ち漕ぎをして駅にむかう。駅に向かう時間が途方もなく長く感じられる。自転車置き場に放り捨てるように停めて、一目散に駅舎に向かった。階段を一段飛ばしで駆け上がると、心臓がバクバクと踊った。駅を利用する人をかき分けるようにして駅務室まで来ると、ハァハァと息を切らしたまま駅員さんに声をかけた。
「すいません、こちらに私の弟が保護されていると聞いてやってきました。私、姉のゆかりです」
「あぁ、電話の。はい、こちらにどうぞ」
『あの噂は本当だった。こいつは悪霊と友達だ。もしかしたらこいつ自身が人間に紛れ込んだ悪霊かもしれない。世の中に霊とか悪霊とかそんなものはないと思っていたけど、こいつだ、こいつは本物だ』
「わかった、わかった。言う、言うよ」
徳乃真の怯えた目を見てゆかりは壁の文字を消した。そして、改めて「どうしてあんなことしたの?」と聞いた。
「忠彦がメアリーの椅子の匂いを嗅いだからだよ」
「それだけじゃないでしょう」
「・・・」
「あの時徳乃真君は、メアリーの椅子の匂いを嗅いだからだ。それになって、何か言おうとしたでしょう。何を言おうとしたの?」
「・・・忠彦の手紙のせいでオレはメアリーと別れたんだ」
「手紙ってなによ?」
「もういいだろう」そう言うと、徳乃真は目に恐怖を湛えたまま家の中に走りこんでしまった。
『忠彦の手紙って、なんだろう・・・』とにかく徳乃真があそこまで怒ったのは忠彦がメアリーの椅子の匂いを嗅いだだけではなくて、メアリーにフラれた原因が忠彦の手紙にあったからだということがわかった。忠彦の手紙・・・。それには一体何が書いてあったのか?
徳乃真からはこれ以上話を聞けないだろう。となると、ゆかりはもう一人の当事者であるメアリーに話を聞くしかないと思った。
ゆかりが家に帰ってくると、自分が帰ってくるのを待っていたかのように家の電話が鳴った。家の電話がなるなんて珍しい、友達からは携帯にかかってくる。家にかかってくるのは家庭教師の派遣とか、塾とか、近所の歯医者の機械的なメッセージぐらいしかない。家の電話がなるとなんだか嫌な感じがする。しかも、亮平の姿が見えなかった。
「あっ、もしもし、こちらは・・・」
電話を切るとゆかりは慌てて家を飛び出た。自転車に飛び乗り立ち漕ぎをして駅にむかう。駅に向かう時間が途方もなく長く感じられる。自転車置き場に放り捨てるように停めて、一目散に駅舎に向かった。階段を一段飛ばしで駆け上がると、心臓がバクバクと踊った。駅を利用する人をかき分けるようにして駅務室まで来ると、ハァハァと息を切らしたまま駅員さんに声をかけた。
「すいません、こちらに私の弟が保護されていると聞いてやってきました。私、姉のゆかりです」
「あぁ、電話の。はい、こちらにどうぞ」

