オナラはなんでも知っている

「初めはね、私、忠彦君のことそんなに好きじゃなかったの。でも、誠寿君と別れて、一人だと誠寿君とよりを戻してしまいそうで、でも、誠寿君とよりを戻すと次は絶対おっぱい触ってくるってわかってたから、もしかしたらセックスしたいって言いだすかもしれないと思って。なんか誠寿君てそんなことばっかり感じるから嫌だったの。だから忠彦君と付き合えば誠寿君も諦めるだろうと思って。誤解しないでね、忠彦君のこと嫌いじゃなかったの。忠彦君も好きだったの。それでも付き合い始めたら、忠彦君て本当に優しかったの。それに誠実で、なんか奥手で、私がキスしたら顔赤くしてドキドキしちゃってて可愛くて、そんな姿見てたらなんかどんどん愛おしくなっていったの。本当はここに来る前、もし、もし、忠彦君が死にたいって思ってるんだったらあたしも一緒に死んであげようと思ってた。でも、忠彦君意外と元気で、あたしホッとしちゃって、安心して、よかった・・・、本当によかった・・・」堪えきれなくなって萌美は涙をポロポロポロポロこぼした。
 あまりに心配して、純粋だからこそ自分の気持ちを追い詰めて、それが一気に安心して、萌美の心は制御できずにこぼれ落ちているようだった。
 ゆかりは萌美の背中に手を置いてじっと隣で座っていた。
「私徳乃真君に聞いてみる。どうして忠彦君に怒ったのか? どうしてあんなひどいことしたのか?」
「萌美・・・」
「だって、私がやらないと、忠彦君がこのままじゃかわいそうだもん。メアリーの椅子の匂いを嗅いだのだってみんなから変態みたいに思われて、あんなひどい目にあって。何か理由があるはずなのよ」
「私がやる」
「えっ?」
「それ、私がやってあげる」
「だってゆかりは関係ないじゃない」
 ゆかりは親譲りの正義感で萌美に告げた。
「何言ってるの友達じゃない」

4月27日 水曜日
 忠彦が窓から身を投げて四日が過ぎた。徳乃真と忠彦はまだ学校に戻ってきていないが、表面上は普段のリズムが戻りつつあった。だが、生徒の心から窓の外に身を投げた忠彦の記憶は消えてはいない。それでも忠彦の怪我が思ったよりも重くないこともあり、みんなの気持ちは徐々に軽くなって行った。
「忠彦いつ戻ってこれるって?」
「まだ無理じゃねぇ」
「お前だったら戻ってこれる?」
「恥ずいよなぁ」
「チンコおさえて窓の外だもんなぁ」
「徳乃真の処分は?」