特に萌美はショックが大きく何も考えることができなくて部屋から一歩も外に出なかった。机に飾っていた徳乃真の写真も倒した。考えることを心が拒否してベッドの中でずっと横になっていると心が深く沈んでいく。暗い井戸の底に落ちたようで明かりが見えない。もし、忠彦が死んでしまったら、自分も忠彦の後を追って死のう、忠彦一人だけにはさせない・・・、そんなことばかり頭を巡っていた。それは考えて出した結論ではなく、心に浮かんだ進むべき道のように思われた。そんな気持ちなのに、自分の体はトイレに行きたくもなる。そんな自身の生命活動がなんとも腹立たしい。しかもベッドから起き上がって階段を降りていくと母親から「どうしたの元気ないのね? ご飯は?」と呑気なことを聞かれ思いやりのない現実に苛立った。
4月25日 月曜日
月曜日は一部授業を変更して急遽全校集会が開かれた。体育館に集まった1年生と3年生の生徒たちは土曜日にやってきた救急車の事件だろうと囁き合い、2年生は重苦しい空気に包まれていた。校長先生から土曜日にあった出来事の説明があると1年生の女子の中には泣き出す子もいた。
忠彦のクラスでは、泉先生が他のクラス以上に時間をかけ丁寧に説明し生徒の動揺を最小限に抑えるのに一生懸命になっていた。
「土曜日にも伝えしましたが、忠彦君は幸い命に別状はなく、足と肋骨の骨折ですみました。手術も成功し今は家族の方がそばについています。ただ、しばらくは入院が必要で、最短でも一月ほどかかるでしょう。それと、今忠彦君が死んだという噂が流れていますが、根も葉もない噂を流さないように、こういうことが忠彦君をさらに傷つけることになりますから、皆さんも気をつけてください」
「先生、徳乃真はどうなるんですか?」と紫苑が聞いた。
「徳乃真は正直まだ先生にもどんな処分が下されるのかわかりません」としか言わなかった。
クラス全体が土曜日のショックから抜け出せずにいて、通常の授業が始まっても生徒一人一人の心に受けた傷が教室全体を暗く重い空気に変えていた。何人かの感受性の強い子は忠彦が落ちた時に聞いた「ドシン!」という音がフラッシュバックすると突然泣き出し、そんな時は保健室に連れていかれた。萌美もそんな一人で顔からは表情が消え時折机に伏せては涙を流し、自ら保健室へ出向くと教室には戻ってこなかった。
4月25日 月曜日
月曜日は一部授業を変更して急遽全校集会が開かれた。体育館に集まった1年生と3年生の生徒たちは土曜日にやってきた救急車の事件だろうと囁き合い、2年生は重苦しい空気に包まれていた。校長先生から土曜日にあった出来事の説明があると1年生の女子の中には泣き出す子もいた。
忠彦のクラスでは、泉先生が他のクラス以上に時間をかけ丁寧に説明し生徒の動揺を最小限に抑えるのに一生懸命になっていた。
「土曜日にも伝えしましたが、忠彦君は幸い命に別状はなく、足と肋骨の骨折ですみました。手術も成功し今は家族の方がそばについています。ただ、しばらくは入院が必要で、最短でも一月ほどかかるでしょう。それと、今忠彦君が死んだという噂が流れていますが、根も葉もない噂を流さないように、こういうことが忠彦君をさらに傷つけることになりますから、皆さんも気をつけてください」
「先生、徳乃真はどうなるんですか?」と紫苑が聞いた。
「徳乃真は正直まだ先生にもどんな処分が下されるのかわかりません」としか言わなかった。
クラス全体が土曜日のショックから抜け出せずにいて、通常の授業が始まっても生徒一人一人の心に受けた傷が教室全体を暗く重い空気に変えていた。何人かの感受性の強い子は忠彦が落ちた時に聞いた「ドシン!」という音がフラッシュバックすると突然泣き出し、そんな時は保健室に連れていかれた。萌美もそんな一人で顔からは表情が消え時折机に伏せては涙を流し、自ら保健室へ出向くと教室には戻ってこなかった。

