オナラはなんでも知っている


 徳乃真はそういうと、周りを見回して、「忠彦お前か?」とニヤニヤしながら忠彦を見て言った。
 忠彦は急に自分の名前を呼ばれてドキッとした。
「知らないよ、僕じゃないよ」
「本当か? お前むっつりスケベだからなぁ。本当にお前じゃないのか?」
「本当だよ、僕じゃないよ」
「それじゃ、晋也お前か」
 徳乃真から名指しで呼ばれた晋也はもう泣きそうになりながら「僕じゃない」と答えた。
「啓、お前だろう、この前の屁の恨みか?」
「違うよ。僕園芸部で昨日は部活やってたんだ」
「だから抜け出せるだろう。それとも誰かと一緒だったのか?」
「違うけど」
「・・・怪しいな。まぁ、いいや。陽介、お前か?」
「違うよ」
「本当か、お前変態だからなぁ。それじゃ英治か?」
「違うよ」
「それじゃ、樹か?」
「違うよ」
 徳乃真は一人一人の顔を見ながら楽しそうに聞いていく。
 するとゆかりが立ち上がった。「徳乃真君、そう言うのよくないと思うわよ」
「おっ、なんだよゆかり。お前変態の肩を持つのかよ?」
「みんなの前でやることじゃないわよ」
 ゆかりは椅子の匂いを嗅ぐような変態は気持ち悪かったが、徳乃真の追い詰めるやり方もどうかと思っていた。これでは犯人があまりにもかわいそうだ。徳乃真に噛み付いたゆかりに萌美が「ちょっと、ゆかり」と心配そうに声をかける。
「それじゃ、匂いを嗅いだ犯人はどうするんだよ」
 ゆかりは七人の顔を見る。みんな不安そうな顔をしている。犯人がこの中にいるのなら追い詰められて学校に出てこなくなるかもしれない。別に犯人に同情したわけではないが、ゆかりの正義感というか、生真面目さというか、母親譲りというか、とにかく、このまま放ってはおけなかった。
「あたしが、」
「あたしがなんだ?」
「ちゃんと、謝らせる。だから、それでいいでしょう」
「お前が見つけるのか。今からが楽しいところじゃないかよ。この中にいるんだぞ」
 すると被害者であるメアリーも「徳乃真、もういいわよ」と言った。
「えっ、お前のあそこの匂い嗅いだやつ見つけようよ」と、徳乃真がふざけた雰囲気だが今から犯人を炙り出すマゾ的な喜びを持って言う。
「あたし、あなたのそういうところはっきり言って嫌いよ」
 教室内の空気がピンと張った。
「・・・まぁ、いいや。メアリーに嫌われてまでやるほどじゃないしな。じゃあ、ゆかり頼んだぞ」