オナラはなんでも知っている

4月21日 木曜日
「みんなそのまま聞いてくれ」
 徳乃真は教室にみんながいることを確認して、椅子の上に立った。みんなが何事だろうと徳乃真に注目する。
「実は、昨日メアリーの椅子の匂いを嗅いでいた変態野郎がいた」
 それを聞いて女子がざわつき始めた。徳乃真はさらに続ける。
「まぁ、つまり、そいつはメアリーのあそこの匂いを嗅いでいたんだ」
 女子生徒の何人か「えっー」とか、「気持ち悪い」と悲鳴を漏らした。
「嗅ぎたい気持ちはわかるけど、メアリーはオレの女だ。あそこの匂いでオナニーがしたいのだろうが、オレはそれを許さない。さぁ、名乗り出ろ」
「普通名乗りでないだろう」紫苑が茶化す。
「今だったら僕があそこの匂いを嗅ぎましたと白状するだけで許してやる。だが、後でわかったらそれだけじゃ済まない。女子の前でフルチンの刑だ。さぁ、名乗り出ろ」
 教室内がシーンと静まり返る。誰も名乗り出るものはいない。
「まぁ普通に考えて部活をやっているものは除外だな。帰宅部が怪しいと俺は思っている。オレの調べでは部活に入っていないものは全部で八人。この中にメアリーのあそこの匂いを嗅いだものがいる。名前を発表する」
「相太」「勇治」「忠彦」「晋也」「英治」「樹」「陽介」「誠寿」「それと啓だ」と、九人を発表した。女子達も『気持ち悪い』と変態を見る目で九人の顔を見ていた。
「えっ、僕は園芸部だけど」と突然名前を付け加えられ啓は泣きそうな顔で訴えた。
「園芸部っていうのは、一人で花壇をいじってるんだろう。そしたらちょっと抜け出てもわからねぇじゃねぇか」
 啓は「でも・・・」と言ったが徳乃真は聞く耳を持っていなかった。
「さぁて、この中で友達同士一緒に帰っている奴はアリバイがあるということだ。一緒に帰った奴はいるか?」
 徳乃真はそう言うとこの九人の一人一人の反応を見ていた。犯人を追い詰めていくのが楽しくて楽しくて仕方がないと言う顔をしている。
 相太と勇治が「僕たち一緒に帰りました」と言う。「そうか、それじゃお前たちじゃないんだな。残りは七人かぁ。いいか、さっき白状しなかったんだから犯人はここでフルチンの刑だからな」
 
『このままでは、このままでは・・・』気持ちが焦り、気分が悪くなっていく。『誰か僕を助けてくれ・・・』体が震える。息が苦しい。逃げ出したい、でも逃げ出せば自分だとバレてしまう・・・。